3カ月連続で前年割れ…なぜか住宅着工戸数が減り続けている背景事情
すでに2020年頃から資材価格の高騰や労務費アップで建築費が上昇し始め、建設物価調査会の建築費指数(東京)を見ると、今年6月時点で2020年以前に比べて約1.4倍に上昇している。今後も建築費の上昇が続く見通しで、その影響は広がり始めている。一方、2024年3月にマイナス金利政策が解除され、長期金利も上がり始めており、住宅ローン金利が今後上昇するのは避けられない情勢だ。
人口減少も住宅着工の減少に拍車をかける
わが国の人口減少も、住宅着工の減少に拍車をかけるだろう。すでに住宅取得ニーズがピークとなる50歳を団塊ジュニア世代(1971〜74年生まれ)が過ぎてしまったため、人口減少の影響がダイレクトに新築需要を押し下げていく可能性がある。
賃貸住宅大手の大東建託では建築費の上昇分を、賃料アップに転嫁できるエリアに絞って受注活動を展開することで、総利益率の悪化を食い止め、入居率の維持を図っている。しかし、賃貸住宅市場における大手のシェアは3割程度。「残り7割を占める地場の中小事業者が建設費アップを賃料に転嫁できなければ受注は厳しくなる」(竹内啓社長)と、市場縮小を懸念する。
大和ハウス工業では、建築費の上昇分を顧客にとって付加価値のある提案を行うことで、売上単価の増加を図る取り組みを進めている。「今回の技術基準の変更で、地場の工務店が苦労しているという話は聞いている。地元で付き合いのある工務店に依頼したくても1年以上待たされることもあるようだ。それが需要全体にどう影響するかは見通せていない」(和田哲郎上席執行役員住宅事業本部長)。
住宅価格の上昇で、住宅ローンの借り入れ額を増やさざるを得ない消費者も増えている。返済負担を軽減するため、返済期間が従来の最長35年を上回る45年、50年の商品を提供する金融機関が増え、需要も伸びている。さらに返済額を減らす商品として「残価設定型住宅ローン」を本格的に普及させる動きも出てきた。
こうした対策によって新築需要を年80万戸レベルに回復するのか。今年4〜6月の季節調整済年率換算値で記録した年60万戸レベルへと縮小していくのか。トランプ関税で自動車などの輸出産業への打撃が広がるなかで、国内需要を支える住宅産業も大きな岐路を迎えている。
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