3カ月連続で前年割れ…なぜか住宅着工戸数が減り続けている背景事情
とくに省エネ基準の適合義務化が、中小・零細の住宅事業者にとって大きな負担になっているようだ。延床面積300平方メートル以上の非住宅(オフィスや商業施設など)には2017年から省エネ基準の適合義務化が実施され、建築確認時には省エネ計算書を提出して審査を受けてきた。300平方メートル以上の住宅(アパートやマンションなど)にも努力義務が課せられ、建築確認への申請義務はないものの事業者は必要に応じて省エネ計算を行ってきた。
今回の基準変更では、これまで全く規制がかかっていなかった300平方メートル未満の非住宅、同じく300平方メートル未満の住宅(主に戸建て)を含む全ての住宅に省エネ基準の適合義務化が実施された。これによって、省エネ計算を行わなければならない建物は、以前の年3.5~4万棟から4月以降は年40万棟※と一気に10倍以上増える見通しとなった。
※アパートやマンションなどの集合住宅は1棟として換算した数字。
急激な需要増に対応しきれていない
大手の住宅メーカーやビルダーは自前で技術者を養成して対応準備を進めてきた。しかし、中小・零細事業者は省エネ計算の技術習得に時間と労力がかかるため技術者の確保が容易ではない。そのため、省エネ計算サービスを提供する専門事業者を利用するニーズが一気に高まった。業界大手の環境・省エネルギー計算センター(代表取締役・尾熨斗啓介氏、東京都豊島区)には、4月以降は前年度の1.5倍から2倍の依頼が舞い込むようになった。
同社ではスタッフ約30人で、これまで年間1000棟程度の省エネ計算サービスを提供してきた。同業界では個人でサービスを提供しているところも多く、急激な需要増に対応しきれていないという。「国交省ではこれほど多くの住宅事業者が省エネ計算サービスを利用することを想定していなかったのではないか」(尾熨斗氏)と見ている。
省エネの設計手法には、建物ごとに省エネ計算を行って基準に適合させる方法と、国交省が定めた仕様に準拠する仕様規定を採用する方法があり、仕様規定を使えば省エネ計算を回避することもできる。しかし、仕様規定は建築費が高くなってしまうため、できるだけコストダウンを図ろうと省エネ計算の方法が多く選ばれている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら