美しい棚田の保全は、こんなに難しくなった 「恋人の聖地」にも選ばれた浜野浦の棚田の今
夕日と棚田が織りなす絶景で有名な「浜野浦の棚田」。田植えの時期には多くのカメラマンが訪れる撮影スポットとして人気を集め、2007年には静岡県のNPO法人が選ぶ「恋人の聖地」にも認定された。その一方で、浜野浦棚田保全組合組合長の松本正弘さん(63)は「今後は棚田を維持、管理していくのが難しくなる」と語る。人々を引き付ける、美しい棚田は今、大きな課題に直面している。
浜野浦の棚田は大小283枚あり、総面積は11・5ヘクタール。傾斜地で段々になっているため大型の機械が入れず、手作業が必要な場所があり、転落の危険も伴う。「並大抵の手間ではできない」と松本さんは話す。
平野部の田んぼと違い、草刈りや田おこしなど通常の作業に加え、さまざまな管理や苦労が伴う。カニがつついた穴から水が漏れることもある。田んぼに水を張った後は土が乾燥しないよう毎日見回りをする。大雨などの災害時には石積みが崩れて補修が必要になる。手入れが行き届かなくなった棚田周辺には雑木が生い茂り、収穫時期にはイノシシ被害にも悩まされている。
組合員は当初18人だったが、高齢化や後継者不足で現在は13人に減った。棚田サミットで、松本さんは第1分科会に参加する。「全国から集まる仲間から、知恵を借りることができれば」と話す。
絶滅危惧種の貝も多数生息
玄海町内唯一の高校・唐津青翔高の環境部10人は、サミットで「玄海町の山・川・海」をテーマに研究発表する。町内での貝の生息調査を基に、棚田をはじめ自然環境を守ることの大切さを訴える。
環境部の生徒は4年ほど前から、自然保護に役立てるために有浦川の護岸や志礼川の干潟など町内7地域で専門家とともに貝の調査を続け、データを集めてきた。イタボガキ、イセシラガイ、オキヒラシイノミなど絶滅危惧種も多く見つかり、地元の自然の豊かさを実感したという。
サミットに合わせて本年度は浜野浦の海岸でも貝を調査し、陸からの栄養豊富な水が海へ流れ込むからこそ貝が生息していると推測を立てた。部長の長谷川将斗さん(18)は「棚田は自然環境に大きな恩恵を与えている。棚田を保護することが貝の保護にもつながる」と話す。
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