AI時代の就活における新たな関係性を軽やかに表現した作品である。ChatGPTをはじめとする生成AIが、エントリーシートや面接対策などの就活の相談相手として機能している現状を「仲良くなった」という親しみやすい表現で描く。従来の就活では先輩や友人が相談相手だったが、現在では24時間利用可能なAIが重要なパートナーとなっている。最初は丁寧語で投げかけていたプロンプトも、いつの間にかタメ口調になっていく様子がうかがえる。この句からは、生成AIを敵視するのではなく、頼れる相手として受け入れる昨今の学生の柔軟性が読み取れる。
就活の現実と建前を描く作品群
【佳作】をあと3作品紹介しよう。
就活における自己演出の心理的負担を率直に表現した作品である。エントリーシートや面接では、すべての経験に明確な動機や学びがあったかのように語ることが求められるが、実際の学生生活はそれほど計画的ではない。いや、「なんとなくやったこと」のほうが多いくらいだろう。就職活動が進むにつれ、なにごとにも意味や目的を「後付けで上手に言える」ようになる自分に対して、「少し嘘つき」という申告により、演出の必要性を理解しながらも、罪悪感や違和感を抱く学生の複雑な心境を表現している。
近年の採用手法の多様化を皮肉った作品である。一度不採用となった企業から、逆求人サイトを通じてオファーが届く現象は、AIマッチングシステムが登録されたキャリアシートだけを頼りに、相手が誰かもわからずにオファーを送る学生を抽出しているため、実際によく起こりうる。学生にとっては戸惑いの原因となる一方、企業側がシステムを駆使して採用を高度化しようとする様子もうかがえる。売り手市場において企業が優秀な学生を確保するために様々な手法を駆使する結果、少し機械的で人間味のないやりとりを招いている現状を、シンプルながら皮肉な笑いを込めて的確に捉えた作品である。
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