自分がどんなにしっかり準備していても、相手の聞く準備が整っていなければ、残念ながら聞いてはもらえません。相手に聞いてもらうための「場のセット」に役立つのが「挨拶」です。
説明上手は、冒頭でまず明るい挨拶をして「場」の空気をつかみます。挨拶によって相手を惹ひきつけ、自分の説明を聞いてもらえる状態にする。
一種のウォーミングアップのようなものですね。またこれは、相手を惹きつけると同時に、自分にとっても気持ちを整える安心材料にもなります。
相手の心に近づく「挨拶」のすごい力
私が新人アナウンサーだった頃。ニュース原稿を読むことに慣れていなかった私は、ニュースの時間になると、いきなり原稿を読み始めていました。放送が始まると同時に「今日未明、愛知県稲沢市の国道155号で……」と始めていたのです。
ところが、あとで録画したVTRを見て気づきました。
唐突にニュースが始まると、どこか機械的で冷たい印象に映るだけでなく、ニュースの冒頭の内容も頭に入ってこない。「これはどうにか改善しなければ」と、思いました。
そこで、先輩アナウンサーが読むニュースを研究。すると、何人かの先輩は、冒頭でひと言挨拶を言ってからニュースを読んでいたのです。そのひと言があることで、視聴者は「これからニュースだ」と、聞く心構えが整うように思いました。
それ以降、私もお昼のニュースなら「こんにちは」、夕方なら「こんばんは」と挨拶を入れてから、少し間をおき、その後「今日未明、愛知県稲沢市の~」と、続けるようにしました。このひと呼吸があるだけで、場が整う気がしたのです。

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