日本のiPhoneも“便利機能”を失う?25年12月の「スマホ新法」全面施行で、迫る「欧州化」の危機…。リスクや展望を徹底解説

現在、欧州のiPhoneユーザーは、世界の他の地域では当然のように利用できる機能の多くを使うことができない。
例えば、マップアプリが自動的に記録する「よく行く場所」の履歴機能や、日常の移動パターンを学習して最適なルートを提案する「優先ルート」機能は、欧州版では完全に無効化されている。
さらに深刻なのは、AirPodsとiPhoneの統合体験が他社製品と同等レベルまで制限されていることだ。従来であれば、AirPodsを装着すれば自動的にiPhoneの音声が切り替わり、MacとiPhone間でライブアクティビティが連携するといった、Apple製品特有のシームレスな体験が提供されていた。しかし欧州では、こうした機能が「自社製品優遇」と見なされ、意図的に削除されている。
この状況は偶然の産物ではない。欧州連合のデジタル市場法、通称DMAが定める厳格な相互運用性要件と、自社製品優遇禁止規定に従った結果である。
実際、欧州では代替アプリストアの導入により、従来のApp Store審査基準では承認されないアプリケーションも流通するようになった。これが「競争促進」の成果として語られることもあるが、果たしてユーザーにとって真の利益となっているのだろうか。
先行する欧州では何が起きている?
2024年6月に成立し、2025年12月の全面施行を控える「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(SSCPA)は、欧州のDMAと驚くほど類似した構造を持つ。
公正取引委員会が所管するこの法律は、AppleやGoogleを「指定事業者」に指定し、アプリ配布、決済システム、ブラウザエンジンなどの分野における競争阻害行為を禁止する内容となっている。
法律の理念自体は理解できる。アプリ開発者の参入障壁を下げ、より公正な競争環境を整備することで、結果としてユーザーの選択肢を広げるという発想だ。しかし、現実の制度設計においては、理念と実際の運用結果の間に大きな乖離が生じる可能性がある。
特に懸念されるのは、「相互運用性の確保」という名目で要求される技術的開放が、ユーザーのプライバシーとセキュリティに与える影響である。欧州の事例を見ると、接続したWi-Fiネットワークの履歴、通話記録、メッセージの内容、カレンダーやリマインダーといった極めてセンシティブな個人情報が、第三者アプリからアクセス可能になっている。
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