日本のiPhoneも“便利機能”を失う?25年12月の「スマホ新法」全面施行で、迫る「欧州化」の危機…。リスクや展望を徹底解説

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DMA施行から1年以上が経過した欧州の状況を客観的に評価すると、当初期待されたような活発なイノベーションは観察されていない。代替アプリストアの利用率は低迷し、多くのユーザーは従来のApp Storeを継続利用している。一方で、セキュリティリスクの増大やユーザー体験の複雑化といった副作用は確実に現れている。

アプリ開発者にとっても、規制対応のための手続きが新たな負担となっている。複数の配布チャネルへの対応、相互運用性要件の実装、コンプライアンス体制の構築といった作業が、本来の開発業務を圧迫している。中小の開発者ほど、こうした負担の影響を強く受けているのが現実だ。

競争促進を目的とした規制が、実際には市場の活力を削ぐ結果を生んでいる可能性は否定できない。規制当局の善意ある意図と、現実の市場メカニズムの複雑さの間には、埋めがたいギャップが存在するのかもしれない。

欧州から学び、日本が選ぶべき道筋とは

日本には、欧州の経験から学び、より効果的なアプローチを選択する機会がまだ残されている。重要なのは、「規制の実施」を自己目的化せず、「ユーザーにとっての真の利益」を最優先に据えることだ。

まず必要なのは、制度の透明性向上である。どのような行為が禁止され、どのような条件下で例外が認められるのか、具体的で予測可能な基準を明示すべきだ。企業が新技術開発に取り組む際の指針となるよう、ガイドラインの詳細化と事例集の整備が急務である。

次に、段階的な導入プロセスの採用を検討すべきだろう。一律に厳格な規制を適用するのではなく、特定の分野や機能から実証的にスタートし、その効果と副作用を慎重に評価しながら範囲を拡大していく方法だ。

そして最も重要なのは、ユーザー自身の声を制度設計に反映させるメカニズムの構築である。規制当局、事業者、開発者だけでなく、実際にサービスを利用する消費者の視点を継続的に収集し、政策に活かしていく仕組みが必要だ。

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