高福祉目当てのアラブ系移民まで子どもを産まなくなった! "少子化対策の優等生"フランスが人口減に転じそうな深刻事情の真実

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だが、最近の現象を見ると、フランス政府のきめ細かで持続的に実施してきた少子化対策の効果が薄くなっていると感じる。欧州各国ではコロナ禍とウクライナ戦争の長期化による将来不安が広まり、回復基調だった欧州の出生率が減少に転じた、という指摘もある。

移民問題が投げかける2つの懸念要素

こうした状況に拍車をかけているのが移民の存在だ。

フランスでは、白人よりはるかに多産なアラブ系移民が全人口の約10.3%を占め、彼らが出生率全体を押し上げていた。だが、フランスの手厚い社会保障を目当てに押し寄せた移民たちも、フランス社会になじんでいく過程で子だくさんではなくなっている。

INEDによると、平均出生率が一般的なフランス人女性(1.7人)を上回る2.5人だったアラブ系移民女性の2世も、フランス社会に統合された結果、子どもを産まなくなったと指摘されている。

2024年のフランスの年間移民流入数は約34万7000人と推定されている。2006年の約23万4000人と比較すると、10万人以上増加している。

移民の歴史が長いフランスにおいて、かつて社会の片隅で静かに暮らしてきた彼らも、今では大手を振って大胆な行動が目立つ。「フランスは移民で変わり果てた」と嘆くフランス人は多く、フランスの伝統やルールを守らないイスラム過激派の中には、フランスをイスラム勢力とフランス勢力に分けるべきという分離主義を公然と主張する人たちも増えている。

そうした中でフランスは何度もテロに見舞われており、2015年にはパリのバタクラン劇場でイスラム聖戦系のグループのテロによって少なくとも130人が死亡し、350人以上が負傷した。近年は在仏ユダヤ権益への攻撃が頻発しているが、彼らの多くはフランスやベルギーで生まれたアラブ系移民の聖戦主義者だ。

最近深刻化している麻薬の蔓延もアラブ系の関与が指摘されており、人身売買や小児売春、暴力の温床ともなっている。移民が国益を犯しているというネガティブな感情は、かつての左派主義者にも広がり、アラブ系移民には厳しい目が向けられている。こうした社会不安の増大も少子化の一因となっている。

折しも、日本でも今夏の参議院選挙で参政党が「日本人ファースト」を打ち出し、外国人問題が注目を集めた。半世紀以上の歴史を持つフランスの移民受け入れ問題の現状は、世界情勢の不透明化も相まって、日本も例外とはいえなくなってきた。日仏両国で今後の国づくりの方向性を議論をすることの重要性が高まっている。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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