高福祉目当てのアラブ系移民まで子どもを産まなくなった! "少子化対策の優等生"フランスが人口減に転じそうな深刻事情の真実

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イタリアでは、ジョルジャ・メローニ首相が家族・出産・機会均等省において家族政策を「最優先事項」に据えている。2010年以降、出生率が低下していることを受け、18歳までの子ども1人につき月額最大189ユーロ(約3万2500円、今年は50%増額予定)の手当と、1000ユーロ(約17万円)の出産手当を導入した。

家族は年間最大3600ユーロ(約62万円)の育児支援、給与の80%に増額された育児休暇、さらに少なくとも2人の子どもを持つ母親に対する社会保障拠出金の免除といった恩恵を受けることができる。

1990年代に出生率が1.24まで落ち込んだドイツは、2000年代には子育てのための休職を認め、子育てのために勤務時間を減らしたりした親の収入を補うため、所得の65%が支給される「親手当」を導入。子育てのために最長3年間休職でき、休職後には元の職場に戻る権利が保障され、2010年には出生率を1.59まで伸ばした。

出生率が低下している複合要因

だが、少子化対策優等国であったはずのフランスも、今では少子化モードに入ってしまった。INSEEの2021年末の調査では、自然人口増減バランスがマイナスに転じるのは2035年になると予測されていたが、冒頭で紹介したように、その時期が早まった。

出生率の低下理由に関して、専門家はおおむね共通した見方をしている。その1つに挙げられるのが、生活費・家賃の高騰や雇用の不安定さなど、若い世代が深刻化な経済難に直面している点だ。子育て支援を支える社会保障の財源が行き詰まることを懸念し、子どもを産むのを控える女性が増えたと、日刊紙「ル・モンド」は指摘する。

加えて、キャリアや自己啓発を優先する女性が増え、第1子出産年齢を遅らせる傾向が高まっている。フランス国立人口研究所(INED)によれば、平均出産年齢が2004年の29.5歳から2024年には31.1歳に上昇した。

保育施設や育児の選択肢の不足も大きな障害となっている。実際、育児プラットフォーム団体MAYの調査によると、親の34%が「日常生活がもっとシンプルであれば、さらに子どもを産みたい」と答えている。

気候変動や環境問題といった将来的な不安も、子どもを持ちたいという願望に悪影響を与えていることが指摘されている。さらに、労働力の減少は生産性とイノベーションを阻害し、経済成長に影響を及ぼす可能性もある。

政府はこの状況を打開するため、とくに不妊対策と育児休暇特別手当制度の充実を通じて出生率の向上を支援しようとしている。特筆すべきは、母親と父親が取得できる新たなマタニティー休暇(出産休暇)の導入を検討していることだ。月額456ユーロ(約7万8000円)の現行の育児休暇よりも高額な経済的支援が受けられるとしている。

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