映画「火垂るの墓」が配信開始で「え、ジブリ作品だったの!?」との声が続出 レンタルビデオ店が消滅しつつある時代に考える"名作の入口"
日常に溶け込む死の気配は、「嗅覚」や「触覚」を伴って生々しく描かれている。神戸大空襲によって全身やけどを負って命を落とした清太と節子の母親が、いくつも重なった遺体の山に投げ込まれる場面は衝撃的だ。夏の炎天下に無数の遺体が淡々と火葬される様子に、清太が感じたであろう熱気やにおいを想像してしまう。
戦後80年の今こそ、思い出したい重み
そして、清太と節子の横穴での暮らしがしだいに困窮していく物語の後半。やせ細った節子の肌に広がるじくじくした湿疹は、見ているだけで自分の「触覚」まで刺激されているような感覚になり、胸が痛む。4歳の小さな身体に抱えた不調はどんなにつらいものだっただろう。その後の結末は、多くの人が知るところだ。
本作には少年の頃に戦争を経験し、栄養失調で1歳の妹を亡くした原作者・野坂昭如の実体験から来る罪の意識が込められている。視聴負荷が少なく気軽に見やすい作品が好まれやすい今だからこそ、『火垂るの墓』のような作品と向き合う気持ちを忘れずにいたい。戦後80年という節目の今年、作品を通して時代の記憶に耳を傾けてみてはいかがだろう。


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