原発事故避難者の互助組織が米沢市で結成、過酷な生活の改善に自ら動き出す

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原発事故避難者の互助組織が米沢市で結成、過酷な生活の改善に自ら動き出す

福島第一原発事故で多くの福島県民が難を逃れた先が隣接する山形県だった。復興庁の調べによれば、原発事故から1年が経過した3月22日現在でも、山形県内には1万3000人を超える避難者が生活している。その多くが福島県内から避難してきた住民で、人口約9万人の米沢市では4000人近くが避難生活を送っている。

3月31日、米沢市内で「福島原発避難者の会 in 米沢」の結成集会が開催。山形市や鶴岡市などに先駆けて避難者の互助組織が発足した。結成集会には、市内の雇用促進住宅や借り上げアパートに住む避難者など約80人が参加した。

呼び掛け人で、避難者の会の代表を務めることになった武田徹さん(71、福島市からの避難者)は、「最大の課題である住宅問題を中心に生活再建に取り組みたい」と意気込みを語った。


避難者の会代表に選出された武田徹さん

同じく呼びかけ人の湯野川政弘さん(57、福島市からの避難者)は福島県の現状について、「放射性物質がなくなるまで、何十年かかるかわからない。戻りたくても戻ることができないのが実情だ」と発言。そのうえで、「避難生活が2年目を迎えるなかで、自ら(困難を)乗り越えなければならないときが来た」と語気を強めた。

結成集会には県内の弁護士や大学の教員も駆けつけ、今後、損害賠償請求の取りまとめや住生活改善のための調査などで住民と協力していくことになった。また、会津地方で避難生活を送る南相馬市の避難者が激励の言葉を述べるとともに、南相馬市出身で米沢市との間を行き来する男性が和太鼓の演奏を披露した。

福島県外に「自主避難」(区域外避難)を余儀なくされた住民の実情が深刻であることも、集会を通じて明らかになった。

まず、直近の問題として高速道路の無料化打ち切りがある。国土交通省は4月1日から、警戒区域や計画的避難区域、旧緊急時避難準備区域などからの避難者を除き、無料化措置を打ち切った。そのため、離れ離れで暮らす家族にとっては、束の間の再開すら従来にも増して困難になっている。

1歳3カ月の娘とともに福島県郡山市から自主避難してきた女性(33)の家庭では、夫は郡山の自宅で“単身赴任”の生活を余儀なくされている。4月からは郡山~飯坂間の高速道路利用が有料(片道1400円)に切り替わったため、週末の再開というささやかなつながりを維持することすら、「家計にとって大きな問題になっている」という。

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