「思いがけないお申し出でびっくりしております」絶滅危惧種イヌワシ研究の第一人者が驚愕した理由

繁殖に成功するのは10年に一度という絶滅危惧種イヌワシのつがいを応援――。「巨大風車群に追い払われる状況をなんとかしたい」と岩手県が踏み切ったイヌワシの生息域公表がきっかけで、保護と地域振興を目指す新たな活動が始まった。
首都圏の建設会社が岩手県一関市大東町にある社有林を無償貸与し、エサ場づくりが動き出す。7月19日、地元の交流館に専門家、住民、環境保護団体が集まり、具体策を練った。
イヌワシ研究の第一人者は「びっくりした」
「思いがけないお申し出でびっくりしております」。こう始まる電子メールを、岩手県立大学名誉教授の由井正敏博士(81歳)は2024年4月1日に送った。宛先は、横浜市に本社がある馬淵建設株式会社(馬淵圭雄社長)の不動産部長。突然のメールへの返信だった。「弊社で所有する山林を、何か環境保全活動に活用できないものかと考え、メールさせていただきました」とあった。
大型猛禽類のイヌワシは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類、種の保存法に基づいて国内希少動植物種に指定され、国の天然記念物でもある。由井博士は長年イヌワシの生息環境の研究に携わり、様々な開発を行う企業からの相談に応じることもある。一般社団法人東北地域環境計画研究会(東環研)を会長として率いる。
2024年3月27日、岩手県はイヌワシの生息域をレッドゾーンとして示した1キロ四方のメッシュ地図を公表した。正式名称は「陸上風力発電所の立地選定に関する基準」。県内全域をレッド、イエロー、グレーの3つのゾーンに塗り分けた。レッドゾーンは「原則として立地を避けるべき区域」。営巣地の場所はわからないようにしてあるが、餌場やよく飛来する場所を含む生息域を示している。
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