「思いがけないお申し出でびっくりしております」絶滅危惧種イヌワシ研究の第一人者が驚愕した理由
一方、馬淵建設が一関市大東町中川字上ノ山の山林約100ヘクタールを取得したのは、1973(昭和48)年のこと。同社不動産部によると、当時ゴルフ場や別荘地を計画した記録が残っている。しかし、アップダウンが激しい地形、農地法上の規制がかかる土地を含むこと、近隣と水利権をめぐる協議が必要、と問題は多く、計画実施に至らなかった。
風力発電事業を計画したのは、2015年。馬淵建設は風力発電設備のメーカーと共同で事業を計画したものの、インフラ整備や環境アセスメントをどう行うかなどの課題に阻まれた。同年秋には、イヌワシに関連して、由井先生を訪ねて相談している。
その同社所有地がレッドゾーンの中にあることが、昨年3月の岩手県による基準公表でわかった。「風力発電所建設はもう難しいだろうという認識がある中で、ずっと塩漬けというか、何もできない状態が続いていたわけですが、『だったら、環境保全に使えないのか』と発想を切り替えたのです」と伊藤満・前不動産部長は明かす。
1909年の創業以来、ろうあ学校を創立して横須賀市に寄付するなどの地域貢献や海岸美化活動などに取り組んできた同社ならではの発想の転換だった。

無償貸与する社有林を「まぶちの森」と命名
同社は当初、東環研への土地の無償譲渡を考えたが、話し合いの結果、固定資産税を負担して無償貸与することになった。東環研、地元の自治会、共有山組合、一関市地域おこし協力隊、日本野鳥の会北上支部が協議会を設立。馬淵建設は協議会に土地を無償で貸与したうえ、一関市林政推進課、樹木医などの専門家とともに顧問として事業を支える体制もできた。
馬淵建設の社有林は新たに「まぶちの森」と名付けられた。協議会の正式名称は、「京津畑(きょうつはた)・まぶちの森管理協議会」。隣接する地元の「下京津畑共有山組合」の土地約80ヘクタールとあわせ、計180ヘクタールで活動を行うことになった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら