自動運転「日本出遅れ論」は間違い?進む「自動運転2.0」への進化の実態

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「これからの自動運転」というと、最新技術を駆使した「未来のまち」を想像されることが多い。だが、自動運転を社会実装する上で最も大事なことは、「誰のため」に「なぜ必要なのか」に尽きる。

「技術で勝って、事業で負ける」負のサイクルに陥る原因は、目的がブレてしまうことにある。そうして視点で、最後に自動運転に関する現実の場を紹介したい。

進む人口減少・高齢化の中で

場所は、人口1839人(2025年3月時点)の秋田県上小阿仁(かみこあに)村だ。

上小阿仁村は、雪道での自動運転が注目され、これまで多くのメディアで紹介されている。

2017年に国土交通省の実証試験として始まり、2018年から2022年まで前出のSIPの対象となった後、2023年から地元での運用を行っている。いわば、日本での自動運転実証の老舗だ。

上小阿仁村の集落の中を走行する自動運転車両(筆者撮影)
上小阿仁村の集落の中を走行する自動運転車両(筆者撮影)

ここでの自動運転導入の目的はなにか。上小阿仁村は、人口の6割弱が高齢者という秋田県内でも最も高齢化率の高い地域のひとつだ。

だが、路線バスは大幅減便され、公共的な交通は、村の独自予算による自家用有償旅客運送のみとなっており、地域コミュニティの維持・活性化が社会課題となっていた。

自動運転導入の目的としては、「公共交通サービスの確立(再編)」「屋外に出ることによる高齢者の健康促進」、それに視察等による「村外からの交流人口の増加や地域活性化」をあげている。

人口減少と高齢化を社会課題とする多くの地域にとって、将来を考えるうえでの、モデル地区だといえよう。

自動運転に使用するのは、ヤマハ製の7人乗りゴルフカートで、地中に埋めた電磁誘導線の上を走る。最高速度は時速19km。前述した自動運転1.0の代表的なシステムだ。

取材対応していただいた、NPO法人 上小阿仁村移送サービス協会の萩野芳紀氏(右)と、手動運転していただいた菅生信雄氏(左)(筆者撮影)
取材対応していただいた、NPO法人 上小阿仁村移送サービス協会の萩野芳紀氏(右)と、手動運転していただいた菅生信雄氏(左)(筆者撮影)

走行ルートは、道の駅を起点に村役場、集会施設、診療所、郵便局などがある小沢田集落や福舘集落と、田園地域を通った堂川集落を結ぶ約7km。さらに2024年から急な坂を通り、高台の沖田面集落を結ぶ約5.5kmのルートが増設されている。

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