学生時代の成績を条件にして、優秀な人材を採用
もちろん、企業側も奨学金を借りてきた社員全員を代理返還の対象にしているわけではない。
旅客鉄道会社のJR東日本(東日本旅客鉄道)は、2024年から優秀な人材の確保や将来を担う若手社員の処遇改善を目的に、奨学金の一部を会社が代理返還する制度を採り入れている。
対象条件は、入社10年目までで、学生時代に優秀な成績を収めた社員に限られる。同社の人財戦略部・関川雅文氏はこう語る。
「当社としては優秀な人材を積極的に採用していきたいという思いがあります。そこで、学生時代に一定の優秀な成績を修めた方に、より当社に関心を持っていただくため、この制度を導入しました。学生時代のGPAや5段階評価の平均点を基に一定の基準を設けており、一般的に“優秀”とされる成績以上を学生時代におさめていた社員が対象です」
大きく分けて3種類ある奨学金の中でも、特に第一種奨学金には成績要件があるため、同社の制度利用者は勉学に励む意識が高かったといえる。
また、同社の代理返還制度は前出の2社よりも複雑だ。同社の人財戦略部・野平敏之氏は、こう語る。
「毎年5万円を上限として、入社後最長10年間、奨学金の一部を会社が代理返還します。例えば毎月の返済額が1万円の場合、5カ月分を会社が代理返還し、6カ月目以降は自己返済となります」
聞く限り、正直ややこしい計算方式だが、JASSOとの協議の結果、現行の形に落ち着いたという。
「1年で50万円を一括で支給する企業もあるでしょう。しかし、当社は優秀な人材の確保と若手社員の処遇改善という両面から考え、単年度に大きな金額を支給するのではなく、各年代間の整合性やバランスも踏まえたうえで、継続的な支援の形が望ましいと判断しました」(関川氏)
現在、同社でこの制度を利用しているのは約400名。10年未満の社員も対象となっているため、新入社員に限らず幅広い層の社員が利用しているという。
いいことづくめのような奨学金の代理返還制度だが、もちろん疑問や懸念点もある。後編では、そうした点にも触れていきたい。
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