「毎月1万円の返済でも厳しい」若手社員たちナゼ発生? 急増する「企業の奨学金"代理返還"」切実な実情

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その結果、大橋さんが経験したように、結婚や出産など、人生の節目にも影響を及ぼす。

たしかに、奨学金は人生を好転させてくれる可能性を持つ。だがその一方で、一定のリスクも生じる。これだけ多くの学生が借りることを考えれば、もはや個人の問題ではなく、社会課題と言っていいだろう。

2781社が導入する奨学金の代理返還制度

こうした中、近年は社員が学生時代に借りた奨学金を「肩代わり返済」する企業が増えている。

企業が社員の奨学金返済額の一部または全額を支援する仕組みは以前から存在したが、それは社員への直接支援に限られていた。それが、2021年4月から始まった「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」では、企業がJASSOに直接送金することが可能となった。

「もともとJASSOの代理返還制度は企業だけでなく、それ以前に文部科学省と内閣府が連携して、地方公共団体なども導入していました。ただ、当時は制度の認知度が低く、利用する人もほとんどいなかったのが現実です。それがここ数年で急速に広まりました」(同)

「社員はわかるが、企業にとってのメリットは何か?」と思うかもしれないが、企業は返還金を給与として損金算入できるほか、返還額が「賃上げ促進税制」の対象にもなる。一定の要件を満たせば、法人税の税額控除も適用されるのだ。

そもそも、労働人口が減少する日本では、多くの企業が人手不足の解消に苦慮している。奨学金の代理返還は、若手社員の定着を促す新たな施策としても注目を集めているのだ。

「最近では、企業が初任給を例えば30万円に引き上げるなどの努力をしていますが、中小企業にとって給与を大きく上げるのは簡単ではありません。

しかし、代理返還制度を活用すれば、人材を集めやすくなるというメリットがあります。初任給を大きく上げられない企業にとっては、同制度のほうが現実的でありがたい手段といえます。奨学金の返済を少しずつ肩代わりする形なので、企業側の負担も分散され、無理のない支援が可能になるのです」(同)

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