「毎月1万円の返済でも厳しい」若手社員たちナゼ発生? 急増する「企業の奨学金"代理返還"」切実な実情

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「そこから、若手社員が将来を安心して描ける職場環境を整えたいという思いから、奨学金代理返還制度を設けました」

同社は最大180万円を上限とし、最長10年間にわたって支援を行う。月あたりの返還額は1万5000円で、年間18万円、10年で180万円となる仕組みだ。

制度の対象者は大卒だけではない! 高卒や専門卒も

奨学金の代理返還制度は、あくまでも会社がJASSOに対して直接返済を行う仕組みであり、社員が返済を免除されるわけではない。本人はこれまで通り自らの借入金を返済しつつ、会社側が別途、同額を繰り上げ返済することで返済期間の短縮が実現する。同社の人事部長・小川晋氏はこう語る。

「JASSO以外の奨学金については代理返還制度の対象外ですが、その場合は6月の賞与時に同額を手当として支給します。ただしその場合、給与扱いとなるため課税・社会保険料の対象になります。支給額は若干減るかもしれませんが、それでも返済の助けになると思います」

この制度は新卒社員に限らず、入社10年未満の全社員が対象。導入初年度は350人が申し込んだという。内訳は大学・大学院卒が338人、高卒・専門学校・短大・高専卒が12人。

支払いは年に1回、3月にまとめて実施され、社員ひとりあたり18万円。申請者が300人の場合、会社の負担はおよそ5400万円に上る。

「制度設計当初は、10年目までの社員700人を見込んでいたため、350人という実績は想定より少なく、予算内に収まりました。採用面で言えば、まだ制度の存在を知らなかった学生も多く、今後の認知拡大が課題です。ただ、今年の採用面接では制度について言及する学生も出てきており、少しずつ浸透してきていると感じます」(同)

実際、学生の間でも奨学金代理返還制度は普及しつつある。筆者が以前取材した福岡県の配電線、屋内線、空調・給排水などの設備工事の施工管理・設計を主な事業とする九電工では、奨学金を借りている内定者の75%が、代理返還制度があることで「内定を承諾する検討材料になった」と回答しているという。

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