
4月中旬、中国の2つの空港でトランジットし、合計60時間かけてジョージアに到達する航空券を予約した。タイパ最悪のフライトを選んだ理由はただ一つ、新疆ウイグル自治区の首府(省都)ウルムチに23時間滞在できるからだ(詳しくは、前回記事「エコノミーより安い「中華系激安ビジネスクラス」で欧州に飛んだ顛末。目的地まで60時間、2泊トランジット。でもホテルは無料の不思議記事」を参照)。
中国は隣国だが、西の果てにある新疆は遠い。日本からの直行便はなく、北京や上海で乗り継いで10時間以上かかる。
新疆は遠いだけでなく、「自治区」にしてはえらく大きい。面積は166万平方キロメートルと中国の6分の1を占め、日本の4.5倍もある。東は甘粛(かんしゅく)省、北はロシア、モンゴル、西はパキスタン、カザフスタン、タジキスタン、キルギスなどと接する。

全日空が2001年に初めてチャーター便を運航するなど、かつてはさまざまな民族や文化が行き交い、旅情あふれる「シルクロードの中心都市」というイメージだった。ところが近年はウイグル族の強制労働や人権侵害が取りざたされ、怪しげ、恐ろしげな雰囲気が漂っている。
筆者がウルムチにいるときに日本人の知人から連絡があり、「今新疆にいます」と告げると、「え? 新疆って外国人も入れるの?」と聞き返された。ウルムチは大都会であり他の都市と同じように入れるのだが、普通の日本人にとっては、「禁足地」「ディストピア」みたいな場所に映っているかもしれない。
シルクロードで日本のコメ問題を語る
ウルムチの空港に到着したのは午後9時すぎ、筆者も足を踏み入れるのは初めてだ。保安検査がかなり厳しいという情報がちらほらあったが、前日に鄭州(ていしゅう)で入国手続きを済ませていたからか、何もチェックされることなく空港を出ることができ、いささか拍子抜けした。

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