空港近くのホテルで1泊して翌朝、配車サービスDiDi(滴滴出行)で車を呼んで、市内中心部にある新疆国際大バザール(新疆国際大巴扎)に向かった。

同世代と思しき男性運転手に「ウルムチは初めてか」「何日くらいいるのか」と一通り質問され、「どこから来たの?」という問いに「日本」と答えると、「わぁ、遠くから来たねえ」と驚かれた。
中国人の対日感情の悪さはしばしばニュースになるが、個人的な感覚としては、こちらが中国語が話せるとわかると、いきなりフレンドリーになることがほとんどだ。運転手はバックミラー越しに筆者と目を合わせつつ、「最近気になっていることがあるんだよね」と質問を続けた。
「日本のコメが値上がりしてるのは何でだ。トランプのせいか?」
まさかシルクロードの中心で、日本のコメ問題を振られるとは思わなかった……。不意打ちを食らい、「旅情」の2文字がすーっと薄れていく。
「コメが高くなっているのは、たぶんトランプは関係ない。トランプが大統領になる前からコメは値上がりしてたし。いくつもの複雑な要因で値上がりしてて、私もよくわからん」
細かく説明してもわからないだろうなあ、と思って答えると、運転手が「トランプは頭がおかしいからな」と続けた。
「考えてみろよ。アメリカ人が使っている日用品はほとんどが中国からの輸入品だよ。関税でアメリカの物価が上がれば、一番困るのはアメリカの庶民じゃないか。ほんとにトランプは頭がおかしい」
運転手は心からアメリカ国民の生活を心配していた。当時はトランプが中国にありえない高関税を課して、「中国が窮地」という角度の報道が多かったが、運転手の冷静な反応に「トランプ大統領の思い通りにはならないだろうな」と予感した。
余談だがこのやり取りをXに投稿したら、「(弾圧されている)新疆の人間が政治のことなんて口にできるわけがない」とコメントがつき、中国人とおぼしきアカウントが「SNSの情報ばかり見てないで実際に中国に行ってみろ。中国人だって普通に政治の話をするぞ」と反論して、ちょっとした小競り合いが起きた。
新疆の人を含め、中国人は政治のことを自由に話していると筆者も感じる。トランプ大統領だけでなく、習近平国家主席の文句も普通に言っている。筆者が外国人だから、警戒する必要もなく思ったことを話してくれているだけかもしれないが。
娘をロシアに留学させたかった運転手
「中国でも日本のコメ問題ってニュースになっているの?」と聞いたら、運転手は「うちの娘が3月に日本に留学したんだよ。だから日本関連のニュースもチェックするようになったんだ」と答えた。
今度はこっちが「わぁ」と驚く番だ。日本人にとって中国人留学生は珍しくもなんともないだろうが、ウルムチからと聞くと「遠路はるばるようこそ」と言いたくなる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら