原爆投下から80年。昨年は日本被団協が初のノーベル賞でやっと認められた「ヒバクシャの声」。それでも「核なき世界」が遠のく理由

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少し組織の話をすると、日本の反核・平和団体はほかにも旧社会党系の「原水禁」(原水爆禁止日本国民会議)と、共産党系の「日本原水協」(原水爆禁止日本協議会)があります。

東西冷戦下、アメリカの核実験に反対すると言って最初は「日本原水協」でスタートしたのですが、ソ連が核実験をしたとたん共産党系が、「アメリカ帝国主義に対抗する社会主義国の核は認められる」と言い出し、ソ連の核実験を容認しました。あきれた社会党系がそこから分かれて「原水禁」をつくったのです。

「日本被団協」は、あくまで政党の影響を受けない純粋な原爆被爆者唯一の全国組織。

ウクライナやガザで戦闘が続いていて、もしかしたら本当に核兵器が使われるかもしれないという危機的な状況になったからこそ今回、日本被団協が選ばれたのでしょう。

世界で高まる核の脅威

日本被団協の活動の一方で、世界での核軍縮の動きは鈍りつつあります。核兵器の使用をほのめかす国もでてきました。

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ロシアは世界の勢力均衡を保つためと、核の三本柱(ICBM=大陸間弾道ミサイル、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイル、戦略爆撃機)をさらに強化する計画です。

ストックホルム国際平和研究所の推計によると、2024年1月時点で世界の核弾頭の数は前年より391発減り、1万2121発。

国別に見ると、保有数が最も多いのはロシアで5580発、次いでアメリカが5044発と、この2カ国だけで世界の約9割を占めています。

近年、増加の一途をたどっているのが世界で3番目に多い中国で、前年より90発増えて500発となり、今後も増え続けるという見通しを示しています。

一方、実戦配備された核弾頭は前年より60発増加したとし、「人類史上最も危険な時期のひとつにいる」と警鐘を鳴らしています。

日本でも核保有を考えたほうがいい、あるいは非核三原則を見直したほうがいいのではないかという議論もあります。日本被団協はこうした意見に怒り心頭です。

唯一の被爆国として私たち日本人に何ができるのか、一人ひとりが考えてほしいと思います。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京科学大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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