IMFの計算式を読み解いてわかった"不都合な真実"、トランプ関税の悪影響は市場予想より甚大になるかもしれない

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トランプ関税が日本の輸出産業に与える影響の度合いはどの程度なのか。自動車を中心に、IMFの想定よりも影響が大きくなる可能性もある(写真:ブルームバーグ)
「トランプ関税」が日本の実質GDPに与えるマイナスの効果は、IMF(国際通貨基金)の推計では0.55ポイントだ。しかし、最終的な関税率によっては0.7ポイントになる可能性もある。そして、日本の輸出メーカーの価格戦略によっても結果は変わりうる――。野口悠紀雄氏による連載第151回。

IMFはGDPが0.55ポイント減と推計

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IMFは4月22日に公表した2025年の世界経済見通しの中で、トランプ関税が世界各国のGDP(国内総生産)に与える影響を推計した。日本に関する結果を要約すれば、2025年の実質GDP成長率について1月見通しでは1.1%としていたものが、4月見通しでは0.554%に下方修正した。

つまり、トランプ関税の影響で実質GDPを0.55%減少させると予測したわけだ。IMFのこの予測がどのような方法で算出されたかはわからないのだが、まず問題となるのはトランプ関税に対する日本の輸出メーカーの価格戦略だ。

日本の輸出メーカーは、アメリカでの販売価格を追加関税前とほぼ不変に保つよう、日本からの輸出価格を切り下げるものと仮定する。アメリカ国内での販売価格は為替レートにも影響を受けるので、販売価格を完全にコントロールすることは難しいのだが、為替レートは不変であるものとする。

これが日本のGDPに与える効果の計算を行うには、日本の対米輸出の総額に対してどの程度の率の関税が課されるかを想定しなければならない。これは現在、日米間で交渉中の問題であり、正確な想定は不可能だ。

とくに大きな不確実性要因になるのが相互関税である。すでに一律分の10%が課されているが、トランプ政権は上乗せ分も合わせて関税率が25%となることを7月7日に通告しており、8月1日に発動させるとしている。

今後、交渉の余地もあり、本稿執筆時点(7月15日)においてはどうなるか見通せない。また自動車関税に関しても、最終的な結果がどうなるかは現時点ではわからない。そこで本稿では、対米輸出全体に対する関税率を「x × 100」%として計算を進める。

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