日本からの輸出の平均単価が、関税前には「p」であったとしよう。仮にこれを不変に保とうとすると、関税後のアメリカ国内での販売価格は「p ×(1+x)」に上昇する。
逆にアメリカ国内での販売価格を関税賦課前と同一にするには、輸出の平均単価がほぼ「p ×(1ーx)」としなければならない。つまり、「x × 100」%の引き下げが必要だ(=関税率だけ日本からの輸出価格を引き下げることによって、日本企業が関税分を負担する)。
貿易統計によれば、2024年における対米輸出額は21.3兆円。これはGDPの3.3%に相当する。対米輸出の平均価格が「x × 100」%引き下げられれば、日本国内での対米輸出にかかわる経済活動の付加価値は「x × Y ÷ 30」だけ減少することになる。
上記の計算式の「Y」は実質GDPを意味する。仮に「x=0.2」とすれば、減少額は「0.007 × Y」。つまりGDPの約0.7%となる。
GDPが1%以上も引き下げられる可能性がある
IMFはGDPの0.554%分が減少するとしているので、逆算すれば「x=0.166」とみていることになる。つまり、トランプ関税政策によって対米輸出に対する関税率が16.6%上昇するとIMFが想定していることになる。
これは、相互関税のうち一律分はそのまま残り、上乗せ分についてはかなり下げられた状態を意味する。そして、このほかに自動車や鉄鋼には別途関税がかかるという想定に基づくものだろう。
ただし事態は進行中であり、最終的な関税率がどうなるかはまだ見通せない。交渉が決着すれば、前記のモデルを用いてより正確な評価が可能となる。
仮に、相互関税の上乗せ分が現在の15%からあまり引き下げられず、また自動車の追加関税率が現在の25%よりさらに引き上げられるような事態になれば、GDP引き下げ効果が1%を超える事態も考えられる。
そうなった場合には、日本経済には極めて大きな影響が及ぶ。こうした展開にならないことを祈るばかりだが、決して楽観できない。
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