代表の神谷宗幣氏は、街頭演説で「大きな国際金融資本、グローバル全体主義」「国際ビッグファーマ」といった言葉で敵対勢力を名指ししている。
陰謀論者がよく使う「ディープステート(闇の政府)」とほとんど同じ意味だが、ここには、自分たちの生活空間が何者かの力によって浸食され、アイデンティティが失われかねないという自己保全に対する漠然とした不安へのアピールがある。
この漠然とした不安の背景には、実質賃金の低迷や不安定な社会的地位、あるいは参政党に関する最初の記事で論じたように、「自国は衰退している」と感じている日本人が7割に上っており、悲観的な見方が強まっていることが挙げられる(参政党人気「理解できない」人が見誤る熱狂の本質)。
参政党の3つの重点政策「教育・人づくり」「食と健康・環境保全」「国のまもり」が、行き過ぎたグローバリズムや国民の窮状を顧みない国の方針に反発し、強い社会不安にさらされている「ソフトな保守層」に訴求したことは想像に難くない。
食は農薬や化学薬品などの害、教育は押し付けられた自虐史観などの害、外国資本による企業買収や土地買収などの害にフォーカスされており、その根幹にある心理は「外なる世界」に脅威の根源があり、「内なる世界」が侵略されているという危機感、焦燥感だ。
「よそ者は危険の化身であり、したがって、わたしたちの生活につきまとう不安を代理的に表現しているのである」と述べたのは、社会学者のジグムント・バウマンだ(『コミュニティ 安全と自由の戦場』奥井智之訳、筑摩書房)。
続けて「よそ者の存在は、奇妙に屈折したかたちで、わたしたちの慰めとなり、さらには安心をさえ与えてくれるようになる」とまで言う。
なぜなら、不安の原因を具体的に指示できるようになるからだ。つまり、「危険がどこにあるかが分かっているので、もはや不運におとなしく甘んじる必要はない。自分で打てる手が現れるのである」(同上)。
「内なる世界」の破壊者
「よそ者」は、観光地でトラブルを起こす外国人や不法滞在の外国人として認識されることもあれば、外国から入って来た急進的な思想として認識されることもある。あるいは外国製の薬やワクチンとして認識されることもある。いわば「内なる世界」の破壊者なのである。
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