《22時間漂流》の船「セブンアイランド愛」が引退へ…。【残り18隻】早くて快適な「ジェットフォイル」更新問題が悩ましい理由

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ジェットフォイルが抱える「老朽化による部品交換困難」「油圧系メンテナンスの難しさ」問題は、それぞれ船会社に共通する悩みとなっているのだ。

では、ジェットフォイル新造船を!→すぐに建造できない理由

セブンアイランド愛 セブンアイランド大漁
竹芝埠頭で待機中の「セブンアイランド愛」「セブンアイランド大漁」(JRTTホームページより)

こういった老朽化トラブルだけでなく、大半の船がバリアフリーの法整備前に建造されたため、船内は段差だらけ、ジェットフォイルは結局新造船が必要となってくる。しかし、川崎重工業がこのタイプの船を建造したのは2020年に1隻(東海汽船「セブンアイランド結」)、その前の建造は1995年までさかのぼる。

しかも2020年のジェットフォイル新造船は、「ロストテクノロジー」(技術喪失)となることを恐れた川崎重工業が退職したOBを呼び寄せ、航空機の技術(アルミ板のリベット接合など)を生かすノウハウを教えてもらって実現したもの。もはや川崎重工業でも、すぐにジェットフォイルを受注できる環境にないのだ。

船舶の共有建造制度
船舶の共有建造制度の仕組み(JRTTホームページより)

またジェットフォイルは通常の船とまったく構造が異なることもあり、1隻の建造費用は70億円程度と、同程度のフェリーより2~3倍もかかってしまう。国の支援策「共有建造制度」なら最大7割、離島航路補助の適用なら最大9割の補助を受けることができるが、その残り金額でも負担は重く、船会社・地元自治体の負担基準などで紛糾しがちだ。

2020年就航の「セブンアイランド結」は東京都が半額を負担することで建造に踏み切れたが、同時期に新造を予定していた九州郵船「ヴィーナス2」はなかなか決まらず、検討を開始した2014年当初は45億円だった建造費用が、いまでは約80億円に膨らんでいる。

いまのジェットフォイルの新造船の仕組みでは、川崎重工業の都合や、桁外れな費用負担もある。

対して補助金の手数は多いものの、配慮する方向や守る仕様も無数に増え、いつまで経っても建造が決まらない。ジェットフォイルは普通のフェリーより、何倍も「老朽化したから新造船」への道のりが大変なのだ。

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