《22時間漂流》の船「セブンアイランド愛」が引退へ…。【残り18隻】早くて快適な「ジェットフォイル」更新問題が悩ましい理由

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万難を排してジェットフォイルが就航できても、「速い」「乗り心地がよい」と引き換えに、さまざまな課題を越えなければ、安定して就航できない。

ぺがさす2
上五島・有川港に向かうジェットフォイル「ぺがさす2」(筆者撮影)

まず、ジェットフォイルの難敵は「極端な採算の取りづらさ」だ。燃費は「毎時2150ℓ(軽油)」と自家用車の100倍はかかり、船会社のおいしい収入源であるトラックなどは積載できない。採算が苦しいからと高額運賃を設定すると利用者は離れる。

さらに、ジェットフォイルは独自の技術を持つため、フェリーとは違うメンテナンス技術を維持するための教育費や、独自の部品を使うがゆえの補修費用もかかる。確かにこれでは、採算が取りづらいワケだ。

さらに、安定した運航の妨げとなる「海洋生物(クジラ・サメなど)との衝突」問題も悩ましい。

近年では、2019年3月に新潟県で発生したジェットフォイル「ぎんが」衝突事故が、記憶に新しい。約37ノット(時速68km相当)で航行中にクジラと思われる浮遊物に衝突、船体は一部が破損し、乗船客121人のうち108人が負傷、38人が骨折という事態に発展した。

ジェットフォイルは高速で航行しつつ、水中スピーカー(UWS)でクジラが嫌がる周波数の音を出して避けてもらっているものの、完全な回避は難しい。かつ、クジラとの衝突を避けきれないジェットフォイル運航に反対する声も根強く、いま就航準備中の沖縄県・久米島でも、期間減便・一定地区の航行禁止などを条件に出す地元団体と、その条件をのむと採算が取れない船会社のあいだで、折衝が難航している。

ジェットフォイル各社とも、クジラ関連の事故やトラブルは多く、今後とも「うまく付き合っていく」以外の解決策はなさそうだ。

不安を抱えるジェットフォイル界隈、活路はどこに?

ぺがさす2
ジェットフォイル「ぺがさす2」船内(筆者撮影)
ジェットフォイル
島民割引の掲示。ジェットフォイルは、割引施策と補助による地元利用に支えられる(筆者撮影)

東海汽船によると、「セブンアイランド愛」はいちど復帰を果たしたものの、2024年11月26日を最後に運航を退いており、見送りイベントなどもなく引退するという。

また同社はジェットフォイルをまだ3隻(セブンアイランド友・大漁・結)保有しているものの、2020年新造の「結」以外は建造から40年を越えており、いずれは新造船か、運航見直しの二択を迫られるだろう。

伊豆諸島以外の各地でも、老朽化したジェットフォイルの代替議論は進んでおり、今後の推移を見守りたい。

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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