
吉田氏の会社では「OMOIYARI」と書かれた額を各事務所に飾っている。
新入社員にはお得意のユーモアを交えて「プリーズ、ドント ダンプミー」(俺を見捨てないでや)と話すという。
「思いやりって、相手のことを思ってやることだから、お節介にも通じると思うんです」という吉田氏は、どんなに会社が大きくなっても、運転手もつけず、プリウスを運転して出社していた。経営者に大事な心構えはまず社員を思いやることだと力をこめる。
「社長やからって偉そうな顔している人は好かんのですよ。誰のおかげやと言いたくなる。従業員がちゃんと働いてくれているから社長はメシが食えるんです。そこを勘違いしたらいかんと思います。
アメリカの偉大な経営者たちの多くは運転手なんかつけていませんよ。日本の経営者はなんだかちょっと勘違いしている人が多いように思います。従業員あっての会社だということを忘れたらあかん」
アメリカに息づく「お節介」
そんな吉田氏は、会社を継ぎたいと言ってくれた孫に対して「お前のええようにやったらええ」と伝えつつ、一つだけ約束させたことがあった。それは「必ず、今の従業員を全部守れよ」ということだ。吉田氏の会社には創業以来ずっと働く社員も多い。
「4度も破産しかけた時も、従業員の給与だけは守ってきました。商売は“金儲け”やない。“人も儲け”なんです。要は、いかに人と信頼関係を築けるかです。
それができたら、金儲けはあとからついてくる。取引先との関係だけでなく、従業員ともおんなじです。『吉田が言うんやから間違いない』と言ってもらえるかです」
信頼関係が築ければ、ここぞと言うときに「お節介」をやいてくれる人も現れる。アメリカでの販売権買い戻しを異例のスピードで成し遂げたのも、周りの「お節介」のおかげだろう。また、日本のコストコでの販売会にはいつもたくさんのボランティア販売員が参加してくれている。
アメリカといえば個人主義のイメージが強く、お節介文化とはほど遠い印象をうけるのだが、50年以上アメリカで暮らし、商売をしてきた吉田氏は、そんなことはないという。
「上下の服の色が合ってないような格好をしてても“あいつ変やな”と言うことはありません。それは個人の自由です。アメリカの個人主義ってそういうことです。ビジネスや暮らしの場ではアメリカにだってお節介はありますよ」
そして、こうも話す。
「人にやったことって不思議とブーメランみたいに返ってくるんです」
アメリカの成功者たちとの交流の機会も多い吉田氏は、歴代のアメリカの成功者たちを見ていると、自分の利益だけでなく、いつも「人さまのため」「社会のため」になることを考えている人が多かったという。
75歳になった今も商売は「“金儲け”やなくて“人儲け”」と、力を込めて繰り返す吉田氏。人を思う「思いやり」と「お節介」の精神は、万国共通の経営の極意なのかもしれない。

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