アメリカンドリームの体現者・「ヨシダグルメソース」吉田潤喜会長インタビュー。成功の裏側と 個人主義の国アメリカに息づく"お節介"の関係

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「日本はよく“100年企業”といいますけど、わたしは“100年企業”を目指そうなんてことははなから考えていなかったんです。会社は売るために創るんや、という頭でやってきました。

3人の娘は誰も会社を継ぎたいと言わなかったし、わたし一代で終わるつもりやった。アメリカでは企業は平均50年で潰れる。“100年企業”なんて考えない」(吉田氏)

ヨシダグループは不動産事業なども合わせると18社を抱える企業となったが、うち4社をすでに手放している。2万5000坪あった自宅は子どものガン患者の養生施設のためにと10年以上前に寄付してしまった。

販売権を買い戻す

そんな吉田氏の元に悲しい噂が入るようになる。手塩に掛けて育て、全米で大きなシェアを誇っていた「ヨシダグルメソース」がみるみる店頭から姿を消しているという。そんなとき、アメリカの高校生だった孫が会社を継ぐと言いはじめた。

この孫に見込みがないと思えば恐らく、吉田氏は事業を継がせたいとは思わなかっただろう。だが孫はその後、アメリカの名門、南カリフォルニア大学をはじめ6つの大学に合格、経営を引き継ぐ覚悟を見せた。吉田氏は「孫は有言実行の男だ」と高く評価している。

「決断10秒即決の人」と言われる吉田氏は、孫が継ぐと言い出したことを受けてすぐさま弁護士に連絡した。それは全米でのヨシダソースの販売権を買い戻すためだった。すると、コストコの元副社長など、ビジネスの世界で親交を深めてきた名だたる人々から吉田氏の元に連絡が入るようになっていく。

「潤喜が買い戻すのか。それならなにか手伝わせてほしい」。言葉の通り、引退したはずの人々が力を貸してくれ、わずか数カ月でアメリカでの販売権の買い戻しに成功した。

以降、「ヨシダグルメソース」は再び、全米のコストコなどでの店頭販売を強化した。吉田氏が販売権を買い戻してから7カ月の時点で販売売り上げはハインツ時代の年間売り上げの倍にまで高まった。

この買い戻し劇は昨年末にアメリカの経済メディアForbesが「2024年における最も重要な食品関連企業の買い戻し」だと報じて話題となっていたのだが、吉田氏の話を聞くと、この買い戻し劇の裏にもさまざまな人の「お節介」が隠れていたことがわかる。

一方、アメリカ以外の販売権は手放していなかったヨシダグループ。日本では昨年夏にコンビニエンスストア大手のファミリーマートとのコラボ商品が期間限定で販売されが、この夏も新たなコラボ商品が店頭に並ぶ予定だという。

ファミリーマートとのコラボ商品
2024年に発売され好評だったファミリーマートとのコラボ商品(写真:ヨシダグループ提供)
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