近年、たっくーさんが注目している分野がある。それは「ヒトコワ」、人間が引き起こす怖い話だ。
怪談は、心霊現象を信じない人はあまり興味を持たない。ヒトコワは実際に起きたことであり、誰もが巻き込まれる可能性があるため、リアリティが強い。そのためか、ヒトコワを聞きたがる視聴者は多いという。語り手であるたっくーさんも、ヒトコワを話すときは怖さを覚えるときがあると話す。
「Aさんから聞いた、こんなヒトコワ話がある」とたっくーさん。
一緒に住んでいた友人が、過去に保険金目当ての殺人をしていて、あるとき警察が部屋に突入してきた。友人は逃げようと窓から飛び降り、打ち所が悪く亡くなってしまった、というもの。この結末、本当は友人が無事で、今も逃亡中だとしたら……。
「僕がYouTubeでこの話をしているのを、その友人がどこかで聴いている可能性もあるわけじゃないですか。そういう怖さはありますよね。ヒトコワを聞くと、怖い人が実は身近にいるかもしれない、自分も体験するかもしれない、という心理が働くと思います。1人暮らしの女性が怖い目に遭った話であれば、同じ環境の人は自分と重ねて、怖さや危機感を覚えてしまうのかなと」


「稲川淳二」レベルの怪談師はまだまだ少ない
怖い話ブームをさらに盛り上げるべく、2023年から2025年にかけて、たっくーさんは怪談イベント「T-1グランプリ」を開催した。10名前後の怪談師が参加し、優勝者には賞金300万円が授与される。「M-1グランプリ」のように、日本一の怪談師を決めよう、という趣旨のイベントだ。
280万人超の、幅広い年齢や属性の視聴者を持つたっくーさんが開催することで、怖い話を好きになる人がより広がれば、という思いがあるという。
さらに、出場者が順に話を披露するだけでなく、300万円もの賞金を用意し、怖さを競い合うことで、イベントとしての盛り上がりも狙った。数百名規模の会場で開催し、チケットはいずれも完売だったという。非常に大きな手ごたえがあったと、たっくーさんは頬を緩ませる。
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