『ドールハウス』『恐い間取り』『近畿地方のある場所について』『8番出口』など注目作がゾクゾク公開!「令和ホラー」ブームはなぜ起きた?


加えて本作では、ホラーコンテンツでよく用いられるジャンプスケア(観客を驚かせるために用いられる音や映像)の使いどころをかなり絞っているのも特徴。「驚き」を誘う手法は本来、恐怖の呼び水として用いられるのだが、インパクトが強いため多用されると驚きが怖さに勝ってしまいがちだ。
『ドールハウス』はそんな驚きの刺激性をきわめて慎重に扱っている。作中、緊張が走る瞬間はいくつかあるが、決定的な“画”が映るタイミングよりもサウンドをやや後ろにずらすなどして、恐怖>驚きのバランスを繊細に調整する姿勢が見られた。
ほかにも、印象的だったのはたとえばこんな演出。物語の序盤、家の中で意図せず「何かを見つけた」佳恵が大絶叫し、それまでの空気が一変するシーンがある。このときあくまでスクリーンに「何か」は映らず、恐怖に染まった長澤まさみの表情だけがアップになるのだ。そのため観客は、彼女の異様なリアクションから事態の深刻さと不穏さを感じ、なにやら背筋が寒くなっていく。
そのように、観客の想像力をかき立てる恐怖表現の数々が、この作品に新鮮味をもたらしている。既存のホラー映画に苦手意識を抱いている人も、怖いもの自体に抵抗がなければぜひ挑戦してほしい。

母と娘をめぐるミステリー要素も
ホラー演出の見応えもさることながら、後半ではアヤ人形の真相をめぐるミステリ要素が盛り上がり、エンタメ的なおもしろさが加速していく。
作中には3人の少女が登場する。1人目は、5歳で亡くなった長女・芽衣(本田都々花)。2人目は、5歳を迎えた次女の真衣。そして3人目が、娘と背格好の似た人形・アヤだ(「人」という単位がよいかはさておき)。
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