『ドールハウス』『恐い間取り』『近畿地方のある場所について』『8番出口』など注目作がゾクゾク公開!「令和ホラー」ブームはなぜ起きた?


5歳になった娘の真衣(池村碧彩)は、あるときクローゼットから人形を見つけ出し、“アヤ”と呼んで自分の遊び相手にするように。それから佳恵は、真衣ではない少女の気配を家の中で感じることが増えていく。
佳恵が真衣をしかると、娘は無垢な表情でこう言う。「アヤちゃんがやった」と。捨てても捨てても、なぜか手元に戻ってきてしまう人形の恐怖が、じわじわと鈴木家をむしばんでいく。
と、ここまでの流れは恐らく、多くの人がなんとなく思い浮かべる人形ホラーのイメージから大きく外れてはいないだろう。しかしながら実際にスクリーンでこの作品を観ると、その印象はいい意味で裏切られることになる。
私が特に新鮮だったのは、この映画が「衝撃的なビジュアル」や「驚き」といった刺激の強い演出に依存せず、恐怖表現を成立させていることだ。
ホラーの鉄板演出を「あえてズラす」挑戦
この作品を観る前は、人形ホラーと聞いて人形が歪んだ表情をしていたり、時にグロテスクだったりする様子を私は想像していた。しかし『ドールハウス』は、アヤの姿形を過度にモンスター化して恐怖をあおることをしていない。
アヤは基本的に、実際の5歳児のように素朴であどけない顔立ちをしている。そのため人形自体はおそらく、ホラーが苦手な人であっても見慣れてしまえばさほど怖くないはずだ(5歳児と同等サイズのアヤは、たたずんでいるだけでなかなかの迫力ではあるが)。
しかしながら、鈴木家で奇妙な出来事が一つひとつ積み重なるうちに、最初と変わらないはずの人形がじわじわと恐ろしいものに見えてくる。人形の見た目を過度にイジらないからこそ、エピソードの積み重ねによって生まれる心理的な恐怖が際立つのだ。
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