イグ・ノーベル賞博士が明かす「あれ?」「なんで?」と考える大切さ――13歳から「フロンティア思考」はつくれる

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宮下:小学校から高校までの指導要領の改訂でも、学生たちの「考える力」を伸ばそうという方向に進んでいるので、やはり「答えがない問題」に立ち向かうための力が必要だということは認識されてきていると思います。それを私なりの言い方で、若い人たちに伝えたいと思って本を書きました。

私は小さい頃から「なんでだろう」と考え続ける子どもだったのですが、よくやっていたのが、目を閉じて右目の右端を指でそっと押してみること。すると、なぜか左目のほうに光を感じられる。左右が逆に反応しているのが面白くて、ずっと試していたのを覚えています。

窪田:目の端を押すことで、視覚の受容体が刺激されて光が見えているのですね。

「なんで?」の疑問から研究への扉が開かれる

宮下:はい。もともと画像工学科の出身でカメラの構造についても学んだのですが、左右が逆になるのはカメラの仕組みと一緒ですよね。実は、これは授業のデモンストレーションでもよく使っているのですが、それは研究の面白さを感じてほしいと思っているからなんです。

13歳から挑むフロンティア思考 イグ・ノーベル賞受賞者が明かす「解なき世界」を生き抜くヒント
『13歳から挑むフロンティア思考 イグ・ノーベル賞受賞者が明かす「解なき世界」を生き抜くヒント』(日経BP)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

つまり、この世に光がなくても光として感じることはできる。それと同じように、たとえば味覚の分野だったら、「電気刺激を使うことで、塩を足さなくても味を変えられる」という発想ができるかもしれない。学生たちが研究に興味を持つきっかけになればと思って、いつも使っているたとえ話なんです。もちろん目を押すときは強く力を入れずに、そっと優しく、と言っています(笑)。

窪田:目のメカニズムはとても面白いので、それを知ってもらえるのは嬉しいです。些細なことでも「なんで?」と疑問を感じるところから、研究への好奇心が湧いてきますからね。

次回は、日本とアメリカの教育を比較しながら、これからの人材に必要な「問いの立て方」について話し合います。

(構成:ライター安藤梢)

宮下 芳明 明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授

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みやした ほうめい / Homei Miyashita

「味覚メディア」「テレテイスト」「テレイート」の概念を提唱、NTTドコモ・H2Lと共同で味覚共有技術「FEEL TECH」を開発。女優の綾瀬はるかさん主演のテレビCMで注目を集める。電気で減塩食品の塩味を強めるスプーン「エレキソルト」をキリンホールディングスと開発・販売。内閣府オープンイノベーション大賞 日本学術会議会長賞を受賞。CES2025にてイノベーションアワードを2部門で受賞。2023年にはイグ・ノーベル賞(栄養学)を受賞。著書に「13歳から挑むフロンティア思考イグ・ノーベル賞受賞者が明かす「解なき世界」を生き抜くヒント」等がある。

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窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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