宮下:そう思いますね。すでにある答えを導き出すようなことは、みんなコンピュータがやってくれます。今、必要なのは、「何を作るか」「なぜ作るのか」を自分で発想できる人材ではないでしょうか。今までにない価値を提案することこそが、人間に求められている。
私たちの研究室で取り組んでいるのは、まさに人ならではの「面白そう」という発想から生まれた研究なのです。
「答えがない問題」を考える習慣
窪田:宮下先生のご著書『13歳から挑むフロンティア思考』には、「答えがない問題」を面白がることの大切さが書かれています。先生ご自身は、研究者になる前からそうした問題を考えるのは得意でしたか?
宮下:日常生活の中で「あれ?」と思ったことを、自然に考える習慣はあったと思います。といっても、世の中をひっくり返すような大発見をしようとしていたわけではなくて。例えば、朝、出かけるときに鏡を見たら、口元に歯磨き粉がついている。そこで「あれ?」と立ち止まって考えてみるわけです。これは顔を洗うのと歯を磨くルーチンの順番を逆にすれば解決できるんじゃないか、とか。
あるいは、2つのものを買い物に行くときにどの順番で行くか。人を説得するためのメールを書くときに、どういう書き方をしたらその人がグッとくるかなとか。どれも「答えがない問題」ですよね。そうしたちょっとしたことを考える癖は、昔からついていたんじゃないかなと。
窪田:私も好奇心が旺盛なので、そういう疑問を持って考えることは好きでしたね。研究者の特徴かもしれません。

宮下:その都度、「答えがない問題」を考えながら工夫してやってみる。それでうまくいかなかったら、また次に生かしていく。そんなことをずっとやっていましたね。私としては当たり前のようにやっていたので、みんなもそうだろうと思っていたら、意外とそうではないみたいで。最近の学生を見ていてもそれは感じます。
窪田:たしかに頭で考えずに、「みんなもやっているから」と動いてしまっている人は多いかもしれないですね。