かつて半蔵門線直通案も、葛飾の「新金線」秘史 旅客化構想続く貨物線「バス専用道」案も検討
分離方式は旅客専用になるため定時性に優れるとしているが、単線の線路を上下列車が走るため運行速度が低下。所要時間は共用方式より5~6分長い約23~26分になる。利用者数も約2万9000~3万3000人で、共用方式に比べ大幅に減る。
概算事業費は最も高額な約700億~800億円。単年度収支も共用方式より少ない約5億~6億円の黒字だ。ただ、現在の線路から分離して公設民営型の上下分離方式で整備する想定のため、国からの補助は補助率が高い社会資本整備総合交付金を適用することが可能に。借入金は約10億~15億円に抑えられる。
専用道方式は所要時間が最長の約26~28分。一般道を一部走行するケースFでは定時性の確保も難しい。利用者数は約2万9000~3万人で、分離方式と同等かやや少ない。一方で概算事業費は最小は約320億~560億円。さらに社会資本整備総合交付金の活用で借入金が不要になる。単年度収支は分離方式と同じ約5億~6億円の黒字だ。

時間短縮効果なども加味した費用便益比(B/C)の場合、共用方式が約1.2~1.6、専用道方式が約1.1~1.7で拮抗し、分離方式は1未満(約0.8~0.9)とされている。となると、B/Cが1以上で借入金による経営リスクもない専用道方式が有力な案といえる。
ただ報告書を読む限り、専用道方式は近年深刻化しているバス運転士不足を考慮していないように感じ、その点は不安だ。鉄道も運転士不足の問題があるもののバスほどではないし、解決策として注目されている自動運転技術も鉄道に一日の長がある。
旅客化を求める声があがってから少なくとも74年が過ぎ、詳細な具体案がやっと出てきた。今後は3方式6ケースのなかから一つに絞り、検討を深度化することになるだろう。実現にはまだ時間がかかると思うが、どの方式を採用するにしても、沿線の人たちにとって便利な公共交通になることを期待したい。

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