かつて半蔵門線直通案も、葛飾の「新金線」秘史 旅客化構想続く貨物線「バス専用道」案も検討

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一方、この検討ではルート上のおもな課題として「金町駅への接続」「国道6号との交差」「高砂踏切」の3つを挙げ、各方式ごとに対策を変えた2案を設定した。

金町駅の構内は旅客列車が新たに乗り入れる余地がない。共用2案(ケースA・B)と分離2案(ケースC・D)は駅の南側に単線・高架の旅客線を新設し、専用道も2案のうち1案(ケースE)は1車線・高架の専用道を新設するものとした。

国道6号との交差は新宿(にいじゅく)新道踏切のこと。交通量が多く踏切渋滞が悪化するおそれがある。共用方式はケースAが線路の高架化で対応し、ケースBは踏切を維持。分離方式はケースCが旅客線のみ高架化でケースDは旅客・貨物ともに踏切維持とし、専用道のケースEは平面交差とした。

国道6号新宿踏切 新金線
交通量が多い国道6号の新宿新道踏切。ここの扱いが大きなポイントの一つだ(編集部撮影)

新金線の現在の単線は複線敷地の東側に敷設されているが、高砂踏切付近は西側に線路を移しており、複線化用地の連続的な活用が難しい。共用方式のケースAは高架化し、ケースBは現在の単線のまま踏切を維持。分離方式のケースC・Dと専用道のケースEは、いずれも旅客線(専用道)のみ高架化する。

なお、専用道方式の残り1案(ケースF)は、高砂踏切の手前から金町駅の北口広場まで一般道を走るものとした。このため3つの課題への対応は考えられていない。

6つのケースは「一長一短」

報告書はこれらの設定により利便性や採算性などの調査結果を示している。これを読む限り、どれも一長一短で悩ましい。

共用方式は貨物列車と線路を共用するため定時性に若干の難があるものの、所要時間は最短の約17~21分。1日あたりの利用者数も最多の1日約3万7000~4万4000人だ。概算事業費は約450億~800億円。単年度収支は約7億~10億円の黒字としている。

ただ、鉄道整備の補助金は補助率が低く、国などからの補助額は最小の約45億~90億円。不足分を借入金(約305億~610億円)で賄う場合、30年目の累積資金収支は約280億~730億円の赤字で経営が成り立たない。

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