かつて半蔵門線直通案も、葛飾の「新金線」秘史 旅客化構想続く貨物線「バス専用道」案も検討
ほかにも問題はあった。1984年4月の国会で国鉄常務理事の須田寛は「(貨物列車に加えて旅客列車も運行するなら)複線化の問題が出てまいります」「その場合、線内にございます踏切をどうするかという新金線自体の問題」があると答弁。旅客化は膨大な費用がかかる複線化と高架化が必須という考えを示した。
1987年には国鉄が分割民営化。地域別のJR旅客6社が線路を保有し、JR貨物が6社から線路を借りて貨物列車を運行するようになったが、貨物線はJR貨物が線路を保有した。ところが、新金線は定期運行の旅客列車がないのにJR東日本が線路を保有し、JR貨物が線路を借りる形になった。将来の旅客化の可能性も考慮したのだろう。
バス専用道の整備も浮上
その後、葛飾区は新金線旅客化の検討を断続的に続けた。しかし全面的に複線化、高架化すると事業費が高額に。高架化せず単線のまま旅客化すると踏切遮断時間の増加が課題になってしまう。解決策を見いだせず、2006年度には検討をいったん打ち切った。
それから10年が過ぎた2017年度、葛飾区は公共交通網整備方針の策定にあわせて検討を再開。2022年度からは、学識経験者やJR東日本、JR貨物、京成電鉄などで構成される旅客化検討委員会・幹事会が発足して検討が本格化した。こうして葛飾区は今年2025年1月、整備手法として「貨客共用」「貨客分離」「バス専用道」の3方式を比較検討した調査結果を取りまとめた。
調査結果の報告書によると、貨客共用は線路をほぼ複線化。旅客列車と貨物列車が線路を共同で使用する。貨客分離は現在の単線を貨物線として引き続き使用。複線化用地に単線の旅客線を路面電車の軌道扱いで整備し、旅客列車と貨物列車の線路を分離する。バス専用道も現在の単線を貨物線とするが、複線化用地には1車線のバス専用道を整備する。
なお車両は共用・分離方式で低床式の「LRT車両」を想定。専用道方式は連節バスを導入するものとしている。

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