三菱電機流の自動運転車は、何が違うのか 人工衛星やインフラの技術を詰め込んだ

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三菱電機が披露した自動運転の試作車。宇宙・防衛で培った技術も応用した。実用化は2020年以降だ

「ハンドル、アクセル、ブレーキ、ウインカーは全て自動です」――。説明の後、車はゆっくりと走行を始め、カーブもスムーズに進み、停止線ではなめらかに止まった。

10月14日。三菱電機は、センチメートル単位で位置把握可能な準天頂衛星などを用いた、「予防安全(自動運転)の試作車」を公開。神奈川県鎌倉市にある三菱電機の研究所内のテストコースで自動走行を披露した。2020年以降の実用化を目指す。

同時に、人が乗っていなくてもリモコン1つで縦列駐車を自動で行う技術や、車線の白線を安定的に検知するシステムなども発表。これらは2017年から2018年頃に順次実用化する。

ミリ波レーダーや衛星の技術も生きた

三菱電機は生活家電や昇降機、発電所設備、人工衛星など幅広い分野を手掛けている、総合電機メーカーだ。自動車機器事業を持っており、エンジン関連の制御装置や電装品、カーナビゲーションシステムまで、広く扱う。同事業の2015年3月期の売上高は、公表はされていないが、6500億円程度とみられており、全体の売上高4兆3230億円の約15%を占める。会社を支える事業の1つではあるが、自動車メーカーのように、産業全体の未来を見据え、この分野に傾注しているわけではない。その三菱電機がなぜ、自動運転車の試作車の開発まで、こぎ着けることができたのか。

今回の開発は、自動車機器事業部だけでなく、部門をまたぐ横断的な総合力で実現させた。例えば、宇宙・防衛で培ったミリ波レーダーは、車両や歩行者を認識・予測する技術に応用。その他にもインフラ事業で培った技術は、道路と車、車同士の連携通信に使用した。さらに、今回の自動運転の要となる、準天頂衛星の開発にも携わっており、部門をまたいだ技術が結集されている。

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