三菱電機流の自動運転車は、何が違うのか 人工衛星やインフラの技術を詰め込んだ

拡大
縮小
ハンドルやアクセル、ブレーキは、すべて自動だ

とはいえ、自動運転車のため、特別にチームを作ったわけではない。自動運転を意識した開発を加速したのは2年前。兵庫県姫路市にある、自動車機器開発センターで始めた。開発を担ったのは、センターの中でも、5~10年先の中長期的に開発を行う部隊だった。

部門を多数抱える大企業になればなるほど、技術が多すぎてしまい、それらを上手く利用できず、事業部門で壁を作りがちだ。三菱電機の大橋豊・専務執行役は、「(全社の研究開発を見る)開発本部には全ての事業本部の技術が引き出しのように保有されている。それを上手く引き出せば、部門間をまたがる技術流用は、比較的容易にできる」と説明する。

さらに、ただ技術を活用するだけでなく、必要に応じた連携も進めてきた。例えば、ミリ波レーダーは、自動運転車に利用するために、これを生産している電子システム本部と自動車機器事業本部が連携、開発を進めた。使える技術を拾い上げ、足りないところは各事業に協力を仰いだのである。まさに三菱電機のこれまでの技術の蓄積を基に、横断的に開発したものと言えよう。

電機メーカーでも貢献できる

自動運転車自体は、多くの自動車メーカーが公道での走行実験を開始している。例えば、トヨタ自動車では首都高速道路を自動運転で走行することに成功するなど開発は進んでおり、開発競争は激化しつつある。それでも、あえて電機メーカーが開発する意義について大橋氏は、「主役はあくまでも自動車メーカー」としたうえで、「自動運転に必要な認知、判断、操作に関する、信頼性の高いデバイスやシステムを保有している。これらの強みによって、安全性の高い自動運転に貢献ができる」と自信をみせる。

2020年以降の実用化を目指しているが、課題はまだまだ山積み。大橋氏は、「基礎技術は仕上がってきている。だが、様々なシーンが網羅されているかをしっかりと見極め、全てに対応できるようにしなければならない」と語る。今後は、様々な環境や状況下でも走行できるよう、自動車メーカーと協力をしながら、さらに安全性を磨きあげていく方針だ。

宇宙から家電までの幅広い事業で培った技術力で、総合電機メーカーとして存在感を示した三菱電機。自動運転車にとどまらず、今後も新しい開発に期待できそうだ。

富田 頌子 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT