シリアで「第三次大戦」を招くのは愚の骨頂だ

米政府はプーチン空爆に冷静に対処すべき

プーチンのシリアでの軍事行動を米国が放置すべきだとまでは言わないが、以上のことからオバマの慎重姿勢が正しいことが分かる。それでも、対立激化を求める勢力が望まない方向で、大統領が取れる手段はある。

第一に、米政府は、プーチンが気に入らないことをやるたびに大騒ぎすべきではない。最良の方法はヒステリックに対応するのではなく、落ち着いて事を運ぶことだ。

ロシアには旧ソ連のような軍事力はなく、過大評価は有益ではない。ロシアがシリアの泥沼にさらに引きずり込まれて、特に死傷者が出るような事態になれば、プーチンはこのシリアでの賭けを悔いることになろう。

実際に、大統領は最近の記者会見で、プーチンがシリアに手を出したのは「弱さからであって、強さからではない」と指摘している。政府全体がオバマに従っているのは好ましいことだ。

「イスラム国」を対話の起点に

次に、オバマは、シリア上空での米ロの「衝突回避」方針を米国防省が確実に維持するようにすべきだ。米軍とロシア軍の偶発的な衝突が起きれば予期せぬ軍事状況が生まれるだけでなくプーチンの言動が数段ヒートアップする可能性がある。そうした状況は、米国と激しく対立することで自国での支持を増やしたいプーチンの思惑ともぴったり一致するからだ。

最後に、オバマはシリアでの大量殺戮を止める解決策をさらに真剣に考えるべきである。イランとの交渉で成功した「P5+1(国連常任理事国とドイツ)」戦略を再び実行するのは検討の価値があるだろう。この手法では、イランも含め、シリアに関わる利害関係者をすべて考慮に入れる必要がある。オバマは成功への条件としてアサド退陣を求めるのは控えるべきだろうが、虐殺を止めることができるのなら、譲歩する価値はあるだろう。

「イスラム国」の兵士(写真:ロイター)

シリアが強力な集権的管理が全土に及ぶ統一国家に戻る可能性は消滅しているものの、すべての国が共有している過激派組織「イスラム国」の脅威を、「P5+1」によるシリア対話の起点とすべきである。

シリア問題から米国が理想的な成果を得ることはないが、慎重に事を進めることによって、オバマはロシアとの危険な武力衝突を避け、悪い状況がさらに悪化するのを避けることができる。

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