シリアで「第三次大戦」を招くのは愚の骨頂だ 米政府はプーチン空爆に冷静に対処すべき
このロジックは当時も現在も間違っている。プーチンはイスラエルや湾岸諸国などの同盟国に脅威を与えているわけではなく、NATO同盟国との本格的な軍事衝突を意図している様子も見受けられない。
米国はすでに戦車や榴弾砲など数百の兵器をバルト海諸国に展開する計画を発表。NATO事務局長によると「冷戦終結以来で最大級の集団防衛体制強化を実施」している。
プーチンは厄介な相手かもしれないが、狂気に走っているわけではない。またシリアで米国が慎重になっているからといって、どこか別の場所でロシアがアメリカの核心的利益を損なおうとしている証拠もない。
さらに、プーチンのシリア攻撃に強硬な対処を求めている勢力は、ひとつの重要な事実を見落としている。仮にオバマがシリアでの事態激化を望んだとしても、彼には「悪い事態」から「悪化」までを含んだ政治決断をしなくてはならないのだ。
第三次大戦を望まぬ限り
例えばマケイン上院議員(共和党、アリゾナ州)は、ロシアの航空機を撃ち落とす能力を持った地対空ミサイルをシリアの反政府軍に提供すべきだとオバマに迫った。しかしこれは、シリアの反政府軍がしばしばアルカイダと協力している事実を無視している。以前アルカイダが成功しかけたように地対空ミサイルは民間航空機も撃墜可能なため、マケインの案は大惨事をもたらすだけだろう。
残された選択肢として、オバマは数十億ドル規模の兵器でウクライナを武装させるアイデアに立ち戻ることも可能だ。しかしこれで、ロシアがどの程度シリア攻撃を控えるか予測するのは困難だ。また、オバマがいみじくも述べたように、プーチンが対抗して分離独立派の支援に踏み切れば、状況はさらに悪化するだろう。シリアでの状況が解決されないのならば、ウクライナで同じような事態を引き起こすことに何か意味があるのか。
シリアでロシアを「武装解除」させる考え自体が「狂気」と「自殺行為」の中間に位置するものだ。ロシアはほぼ間違いなく、おそらく東欧で米軍もしくはNATO軍に反撃してくるだろう。オバマが第三次世界大戦を引き起こしたいと切望しない限り、この選択肢は無視しても問題がない。