タリバン最高指導者の死が宣言された理由 和平を巡って深刻な派閥対立が起きている
[ロイター]- 7月29日に動静不明のタリバン指導者、ムハンマド・オマル師がすでに死亡していたことが発表されたことに対し、当然一部からは「アメリカの宿敵の死」として歓迎する声が上がるだろう。しかし、実際にはそのような状況にはない。この片目のアフガニスタン指揮官の死により、この10年の間で最も前途有望な状態にあったアフガニスタンでの和平交渉は断念せざるを得ないかもしれない。
アフガニスタンの西側外交官らによれば、タリバンの日常業務におけるオマル師の直接的役割は何年も前から減少し続けていた。彼が生存しているとしても、このアフガニスタン前指導者は重病状態であると考えられていた。
和平交渉によりタリバン内に深い亀裂
とはいえ、このオマル師にまつわる俗説は、和平交渉が成功できるか否かを決定する重要な要素だった。若いタリバン戦闘員の忠誠心を奪い合っているIS と他のジハード主義グループと合わせ、オマル師以外の指導者が運動を維持できるのか、そして、そのメンバーらに和平調停を受け入れさせることができるのかは不明である。
「タリバンで誰もその指導力を尊重しなくなった場合が悪夢です」と国際危機グループ (ICG) のシニアアナリスト、グレアム・スミス氏は語った。「そうなると、交渉できる相手がいなくなります」。
10年間アフガニスタンを代理戦争のための戦場として使った後、アフガニスタンの国内分裂を悪化させた主要国間でようやく交渉の準備が整った。2週間前に中国と米国の外交官らが見守る中、パキスタン当局者らがアフガニスタン政府とタリバンの高官らの間で10年ぶりに初めての直接和平交渉を召集した。2回目の交渉は7月31日に行われる。
しかし、この交渉の実現はタリバンにとって大きな圧力となり、グループ内に危機的な亀裂が拡がった。
オマル師の死を宣言した武装集団の目的は、和平交渉を推進するアフタル・マンスール師に対して疑問を投げ掛けることである。