英FTのネット広告実験が注目を集めるワケ 表示回数ではなく表示時間を重視
アテンション時間については、ニュースサイト「UPWORTHY」が2014年2月に初めて提唱した後、議論が続けられている。「BuzzFeed」のテックブログ(14年6月)によると、アテンション時間の欠点は、すべてのコンテンツが長いエンゲージ時間を要するわけではない点だ。
米ニュースメディア「The New Republic」の研究担当ディレクター、ノア・チェスナット氏は「もし、誰かが長い特集記事に20秒しかかけずに他のサイトに逃げてしまえば問題だが、政治家のエリック・カントー氏が選挙で票を落としているというニュース速報は20秒かければ充分だろう」と指摘する。
新興メディア企業VoxMediaで、オーディエンスディベロップメントを手掛けるクリス・トーマン氏も「さまざまなコンテンツがさまざまな目的に応えている。時間指標をサイトすべてに適合させるのはうまく機能しないだろう」と語った。
アテンション時間最適化の恐れ
一方で、同ブログはSEO(検査エンジン最適化)のような「アテンション最適化」業者の出現を懸念している。パブリッシャーがありとあらゆる手を使って、サイト訪問者の足止めする施策をとるようになることだ。
米DIGIDAYによると、メディアプラニング企業のメディアキッチン代表、バリー・ロウェンタール氏は「我々は別に時間を買いたいわけではない。クリックとインプレッションとオーディエンスを買いたいのだ。時間ベースは一種のエンゲージメント指数であるが、すべてのコンテンツ提供サイトの指標である必要はない」と話している。
これに対し、FTのタイムベースの測定を請け、ネット広告業界のアテンション時間のオピニオンリーダーであるChartbeat(前出)のCEO、トニー・ヘイル氏は、アテンション時間はいいコンテンツの製作を評価できると反論した。ユーザーが短い記事を気に入り、再訪を重ねれば、アテンション時間は増加しいくことになるため、質のいいコンテンツ製作を促し、ユーザーが価値のあるものに時間を使うことにつながるという。
【付記】FTは1888年にロンドンで創刊、新聞紙購読が22万部強、デジタル版が50万4000人、購読者の合計は約73万人。同紙の購読者はC層(CEO=最高経営責任者など経営者層)にあるとされ、ハイブランドの広告を集める。このFTを日本経済新聞が2015年7月、8億4400万ボンド(1600億円)でピアソンから買収した。
(編集部:加藤鈴)
DIGIDAY[日本版]の関連記事
ページビューは死んだ。その先にある「新指標」を模索する、新興・大手メディア
若者の画面スクロールの速さは、年配層の2.5倍! Facebookが考える広告視聴の新定義
再生開始から3秒で、7割がスキップ?「動画広告」の課題を浮き彫りにした、Snapchatの事例
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら