英FTのネット広告実験が注目を集めるワケ 表示回数ではなく表示時間を重視
まず、ニッチなメディアであるため、広告表示回数が一般メディアと比較したときに格段に少ないこと。つぎにコンテンツの質の高さもあり、これらの読者はほかのビジネス系メディアより長くサイトに滞在していることだ。こうした点からFTらが時間ベースを導入するのは合理的だ。
同時に、メッセージが複雑で、高いエンゲージメントを必要とするブランドにも時間ベース広告は最適だ。米広告メディア「Adage」によると、BPの広報担当者、ロバート・ワイン氏は、FTの広告を買った理由として「我々の広告メッセージは深い意味合いがあるのもが多く、内容を理解するにはそれだけの時間を要する。インプレッションよりも時間を買うことにより、量より質を求めることができる」と話した。
現在、時間ベースの売上はディスプレイ広告全体の7%を占める。2016年は売上の30%を目標にするとスペイン氏は語った。
新コンセプトの浸透には時間を要す
しかし、FTには、いかに時間ベースの広告をマーケターに売り出すのか、という課題が残っている。CPMを基準にする媒体社のアプローチが根強くあり、アテンション時間で広告を売ることに抵抗と不信感がゼロとは言い切れない。
FTは5秒以上の表示があれば充分に「目視された(ビューアブル)」とみなすが、業界内で一致した秒数はいまだ定められていない。また、どれだけ長い間広告が眺められても、実際にクリックされなければメッセージが伝わらない広告もある。
「FTのビジネスの大部分がハイブランドの広告だが、ハイブランドの広告にとっても一般的なパフォーマンス評価基準はクリック率だ。FTのクライアントは新しい指標の導入に寛容だったので運が良かった」と、スペイン氏は話す。「しかし、より多くの広告代理店に話へ乗ってもらう必要がある。彼らは広告が何秒間見られているかなど気に留めていない、『100%のビューアビリティ』が欲しいだけだ」という。