【産業天気図・銀行業】07年度は海外貸出が牽引。与信費用も一服し増益へ
07年度は総じて「晴れ」を予想している。
国内の大手企業向け貸し出しはメガバンク各社とも伸び悩む。大手企業は設備投資に動き始めているが、主に手元資金でまかなっており、新たな借り入れを本格的におこすに至っていない。ただ、昨年のゼロ金利解除以来、利ザヤは好転しており、07年度は利ザヤ回復のメリットをフルに享受できそうだ。また、海外向けの貸し出しは残高や利ザヤの拡大が見込まれる。投信や個人年金の販売手数料収入、シンジケートローンやM&Aのアドバイザリー手数料など投資銀行業務に伴う手数料収入は若干一服感が出そうだが、与信費用は巡航速度のレベルに落ち着いており、これらを総合すると3メガグループとも最終増益が見込まれる。
収益に影響を与えそうな要因の一つは、金利動向だ。日銀は昨年7月に続き、今年2月に無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%引き上げた。今年は4月に統一地方選、7月に参議院選挙を控えており、次の利上げ時期は秋以降との見方が強まっている。次の利上げのタイミングがいつになるかという問題のほか、貸出金利をどこまで引き上げられるのかが各行の明暗を分けそうだ。
もう一つ注目されるのが、コンプライアンス(法令順守)のリスク。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.東証>や三井住友フィナンシャルグループ<8316.東証>は、米国金融監督当局からマネーロンダリングの防止体制が不十分だとして行政処分を受けている。世界的に金融機関に対して法令順守を厳しく求める風潮が強まっており、「行政処分リスク」と法令順守のためのコストが各金融グループにとって大きな経営リスクになっている。
個別の動向を見ると、三菱UFJは投信などの手数料収入が伸びるが、国内融資が伸び悩み、収益は微増圏の見通し。2月に金融庁から受けた業務改善命令、米国におけるマネーロンダリングに絡む行政処分の影響がどこまで出るのかが焦点となる。みずほフィナンシャルグループ<8411.東証>は、海外中心に貸し出しが順調。株主還元の姿勢を強めており、引き続き増配が期待される。三井住友は金利上昇が追い風になり、資金利益は続伸へ。手数料収入も増勢、与信費用は巡航速度の水準で、最終増益となろう。
【山田徹也記者】
(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部
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