原発のコスト エネルギー転換への視点 大島堅一著 ~規制業種が陥りやすい典型的な罠に注意を喚起

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電力会社や政治家、政府、研究者、メディアらが構成する原子力複合体が、いかに安全性軽視の原子力政策を策定していったかも断じる。ノーベル経済学賞を受賞した故スティグラー教授は、規制業種に関する研究で、「一般に規制当局は対象産業の囚われの身となり、その産業の利益になるように政策を設計、運用する」と論じていた。原子力複合体の暴走も「囚われの身」理論が当てはまる。賄賂や退職後の職の提供といった矮小な話ではなく、関係者が規制業種の価値観に深く共感し、同じ思考になっていく。皆一国の将来を考えていたはずだが、いつの間にか社会の常識と乖離し、国民の利益が損なわれた。規制業種が陥りやすい典型的な罠であることを肝に銘じ、電力市場改革を進める必要がある。

おおしま・けんいち
立命館大学国際関係学部教授。専攻は環境経済学、環境・エネルギー政策論。1967年福井県生まれ。一橋大学社会学部卒業、同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。高崎経済大学専任講師・助教授、立命館大学助教授を経て、2008年より現職。

岩波新書 798円 221ページ

  

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