「東日本大震災で大儲けした」イギリス人が語る「トップトレーダー」たちのリアル、彼らはどうやって"恐ろしくなるほど"儲けているのか

東ロンドンの貧しい家庭で生まれ育つが、数学的才能とすさまじい努力で20代前半にしてシティバンクのトップトレーダーに上り詰める。が、嫉妬にまみれた狂気の世界での“成功”はやがて著者の精神をむしばんでいく。
トレーディングの現場は「マクベス」の世界
──トレーダーの仕事や生きざまがリアルに描かれています。
世界中の超優秀な若者が「トレーダーになって成功したい」と集まっていた。最高の成績を取って最高の職を得るために、異常なほどの努力をしていた。それは執念であり、野心であり、狂気に近い。トレーディングの現場は野心と慢心にあふれていた。
若者が「金持ちになりたい」「成功したい」という気持ちに取りつかれてゲームのように世界を操作しようとする──描きたかったのは、「世界を支配しようとするマキシマリスト」の話だ。まさに『マクベス』の世界。野心、狂気、そして執着が渦巻いている。
本作の中で同僚の一人が吐いたセリフがこの本を象徴している。「誰かと出会うと、その瞬間に、相手が俺より上なのか下なのか、知りたくてたまらなくなる」。これは「個人主義への執着と競争への執着の末路」の話だということ。まさに映画『バトル・ロワイアル』(2000年公開)のような世界だ。
──日本の映画と類似点が?
あの映画は西洋的な経済思想、つまり個人主義と競争中心の価値観に対する日本からの批評ではないかと思っていた。僕の本もそういう価値観を批判したかった。
若者たちに「人生は『誰よりも優れること』『勝つこと』『1番になること』がすべてだ」と教えたとして、それが行き着く先は何か。人生を「勝つこと」に捧げると、誰と会っても心の中で「コイツは自分より上か? 下か?」って判断するようになる。自分の存在の核が競争になってしまう。
競争というゲームに取りつかれた男たちの物語を描くことで、僕が「病」だと思うようになったものを浮き彫りにしたかった。
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