2012年日本の事業会社の信用力見通しは、引き続き弱含み<下>《ムーディーズの業界分析》

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総合電機

国内および世界の低い経済成長率を背景に、日本の総合電機業界の見通しは陰っている。

08~09年の金融危機以来、日本の総合電機メーカー5社、三菱電機(A1、安定的)、日立(A3、安定的)、富士通(A3、安定的)、東芝(Baa2、安定的)、NEC(Baa2、安定的)は、事業ポートフォリオの本格的な再編とコスト削減を行い、競争上の優位性のあるコア事業への集中を進めてきた。その結果、収益性と財務レバレッジは改善し、世界的な景気後退前の水準を回復している。しかし、依然としていくつかのネガティブな要因が残っている、とムーディーズは考えている。

第一に、世界および日本の経済成長率の低下である。国内の家電メーカーと比較して、総合電機メーカーは官民双方に対する国内市場向けエクスポージャーが大きい。国内市場は昨年3月の大震災から依然として大幅には回復していない。

一方、5社は海外への事業拡大も図っている。たとえば三菱電機は、新興市場におけるリスクをうまく管理しつつ、需要拡大の機会をつかんでいる。しかし一般的には、こうした市場での急速な事業拡大は事業リスクの増大を伴うことがある。

第二に、一部の総合電機メーカーは海外での買収機会を求めている。ただし、負債による買収はレバレッジを高め、また事業リスクも高まるため、慎重な評価が必要となる。

総合電機メーカーにとって、電力システム、水処理、エレベーター/エスカレーター、交通システム、産業機械・工場設備といった社会インフラストラクチャー関連事業は、安定的な利益源となっている。政府や地方公共団体を含む主要顧客との関係も通常安定している。しかし、海外の企業買収の場合、こうした優位性を生かすことができない点に留意が必要である。

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