ガッツリ系バラ丼と関西風うどんのセットにそそがれる"湘南民の熱情"の正体、「里のうどん」が《藤沢のソウルフード》になった2つの必然

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2020年4月7日に緊急事態宣言が発出されたのを受けて、同社は5月1日からクラウドファンディングを開始。コロナ禍では多くの飲食店がクラウドファンディングを活用し、当面の運転資金を工面したが、同社の取り組みはその走りだったといっていいだろう。  

結果として、3日間で500万円の資金提供があり、最終的には816万円に達するなど、非常に大きな反響を集めた。当時、多くの人にとってクラウドファンディングを通して支援をするという経験がなかったが、それでもこれだけの早さで支援金が集まったのはファンがいたからにほかならない。

その頃、里のうどんは創業20年を超えており、幼い頃から通う地元の人も多かった。だからこそ、自分が慣れ親しんだ味がコロナ禍でなくなってしまうのは悔しいと感じる人は多かったものの、緊急事態宣言中は店舗も営業をしていない。できることが限られている中でクラウドファンディングが実施されたので、支援したいという気持ちが一気に集中し、それが816万円という金額につながった。

全国へ広がっていく藤沢のソウルフード

現在、里のうどんは海外事業から撤退するとともに、店舗も3店舗まで縮小させている。では、会社の成長が減速しているかというと、そういうわけではない。むしろ、コロナ禍前よりもブランドとしての可能性は大きく広がっている。

そのカギとなるのがフランチャイズ展開だ。すでにフランチャイズの加盟募集を行っているが、多くの引き合いが来ている。なかでも、テラスモール湘南のようなショッピングモールから寄せられる期待は大きい。

ショッピングモール内のフードコートにはうどん店が必須で、軒並みどこも高い売り上げを上げている。しかし、テナントとして入っているブランドは、讃岐うどんであるケースが多い。日本人の多くが、うどんといえば讃岐うどんをイメージしている影響が大きいためだ。

そもそも讃岐うどんが日本に広まったのは、2000年前後に起きた第4次うどんブームだ。当時、「丸亀製麺」や「はなまるうどん」も誕生し、その後、一気に店舗数を広げていく。

しかし、ここ数年、ショッピングモールも乱立し、競争が激しくなった結果、閉店に追い込まれるケースも目立つ。そうした背景もあり、集客装置として重要な役割を果たすフードコートのあり方が見直されている。金太郎飴のように、どのモールに行っても食べられるブランドではなく、キャラの立った里のうどんのような店舗が求められ始めているのだ。

テラスモール湘南店は同モール内のフードコートで随一の売り上げを誇る(撮影:大澤誠)

今後、こうした動きは全国で起こっていくだろう。それを追い風に、里のうどんはほかのショッピングモールとの差別化を行えるブランドとして注目度を高めていく可能性が高い。

なんといっても、2000年初頭に起きた讃岐うどんブームにも負けず、たくさんのファンを獲得し続けてきた。それができたのは、やはり幅広い年代に刺さる、うどんとバラ丼のセットがあったからだ。近い将来、全国で藤沢のソウルフードが楽しめる日が来るかもしれない。

三輪 大輔 フードジャーナリスト

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みわだいすけ / Daisuke Miwa

1982年生まれ、福岡県出身。法政大学卒業後、医療関係の出版社などを経て2014年に独立。外食を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。「ガイアの夜明け」に出演するなどフードジャーナリストとしての活動の幅を広げ、これまでインタビューした経営者の数は 500 名以上、外食だけでも200名近くに及ぶ。

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