ガッツリ系バラ丼と関西風うどんのセットにそそがれる"湘南民の熱情"の正体、「里のうどん」が《藤沢のソウルフード》になった2つの必然
もともと西嶋さんはバンドマンだった。だが夢破れて、飲食の道に進む。うどんを選んだのは、たまたまうどん店の居抜きを買い取ったからだ。
うどんをつくった経験はないが、同氏は試行錯誤を重ね、2年の歳月を費やして納得のいくうどんを完成させた。それが出汁本来の味を生かした関西風のうどんだ。西嶋氏の両親が岡山出身ということもあり、幼い頃から慣れ親しんだ、少し薄口の関西風のうどんにたどり着いた。
しかし当時は、個性的な店主がつくるラーメン店が環八をはじめとしたロードサイドに続々と登場していた時代。パンチの効いたラーメンが人気を集める中、関西風のうどんだけで勝負をすると負けてしまう。
そこで、うどんをすまし汁のように脇役に据え、しょうが焼き定食として提供するスタイルを考案。ただ、4坪13席と店舗が狭いため、その中でうどんもしょうが焼きもどちらも調理することは物理的に不可能だった。

どうすべきか迷った結果、西嶋さんは丼にして提供することを思いつく。丼にすれば盛りつけるだけで料理が出来上がり、場所も取らない。創業当時はワンオペで店を切り盛りしていたため、それが最適な方法だという事情もあり、バラ丼が誕生した。
同店の一番人気は、うどんとバラ丼がセットになった「バラ丼セット」だ。うどんについていうと、口当たりがいいスープと、柔らかさとコシの中間のような麺のため、子どもでも食べやすい。一方で、バラ丼は濃い目のタレに、マヨネーズがアクセントになっていて成人男性でも満足のいく一杯だ。
こうした特徴があるため、男性の一人客から家族連れまで、幅広い年齢層に選ばれることが多い。それがフードコート内の売り上げ1位という結果につながっている。
ソウルフードになりえた2つの理由
とはいえ、ただおいしいだけでは、バラ丼が地元の人から「藤沢のソウルフード」として認識されることはない。同店が特別な存在として突き抜けることができた背景には、2つの理由がある。
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