
中国の報復関税とデカップリング戦略
5月10日から2日間行った協議の結果、アメリカと中国は追加関税を115%引き下げることで合意した。アメリカの中国に対する追加関税は145%から30%に、中国によるアメリカへの一律の追加関税は125%から10%になった。なお、引き下げた関税のうち24%については90日間の停止となっており、両国は今後協議を進める。
この合意は、トランプ政権の強硬な関税政策の“限界”が明らかになったことを示している。
中国は当初から報復関税によって応戦し、交渉に応じる姿勢を示さなかった。その報復は、とくにアメリカの農産物を標的としており、トランプ政権の支持基盤である中西部の農業州に直接的な打撃を与える意図があった。
これは、アメリカの選挙区事情を緻密に分析したうえでの「精密報復」といえる。このような対応は、2018年以降の米中貿易戦争でも繰り返されてきた。
さらに、中国は報復だけにとどまらず、経済圏の多極化を志向する戦略を並行して進めている。とりわけ、サプライチェーンの「脱アメリカ化」を掲げ、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国や「一帯一路」構想を通じた新たな経済連携を強化している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら