「非常に悲しく、大きな痛みを伴う決定だ」ーー日産自動車が「2万人削減と7工場閉鎖」の大リストラ、遅すぎた決断の代償
「どうして前の経営体制でこうした改革ができなかったのか?」。複数の記者に問われたエスピノーサ社長は慎重に言葉を選びながら、「経営会議の多くのメンバーが交代し、危機感を共有した。会社としてよりスピードアップしなければならない」と答えるにとどめた。
日産は、昨年11月に9000人の従業員と2割の生産能力の削減を柱とする構造改革「ターンアラウンド」を示した。だが、生産能力削減は生産ラインの統合やシフトの調整、配置転換が中心。内田誠前社長や坂本秀行前副社長など当時の経営陣は工場閉鎖に消極的だったためで、市場関係者から「(改革の)規模も中身も明らかに踏み込み不足」と批判の声が出ていた。

日産の年間販売は2017年度の579万台をピークに、2024年度には334万台まで4割以上も低下。一方、グループ従業員数は2017年度末の13.8万人から2023年度末の13.3万人と大きく変わっていない。日産の工場稼働率は6割強と低迷しており、設備も人員も身の丈を超えたままとなっていた。
2万人の人員削減、日本を含む7工場の閉鎖は、日産に必要だった抜本改革がようやく打ち出されたといえる。
矢継ぎ早に合理化策
業績悪化に加え、ホンダとの経営統合協議の破談もあり、内田氏の退任とエスピノーサ氏の次期社長就任が決まったのは3月11日のことだ。そこから矢継ぎ早に合理化策が打ち出されるようになった。
3月末にはインドの合弁工場の持ち株をルノーに売却することを決定。5月9日には福岡県北九州市でのEV(電気自動車)向けLFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池の新工場計画の撤回を発表した。電池新工場は今年1月に計画を表明したばかりで、経済産業省から最大557億円の助成を受ける予定だったが、「冷静に厳しい目で精査した」(エスピノーサ社長)と短期間で撤回した。
経営体制が代わり、ようやく現実を直視した再建策が出てきた日産。だが、「メスを入れるのがあまりに遅すぎた」(日産元幹部)という声は絶えない。

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